| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-465 (Poster presentation)
野生動物のエネルギー消費量を知ることは,生存できる最低限の採餌環境を明らかにする上で有用である.野外の動物のエネルギー消費量を推定するために,個体の採餌行動を直接観察して採餌物の種類と生物量を特定する方法があるが,採餌物が小さい場合や目視外の時間や場所で採餌した場合には特定ができず,推定値に誤差が生じる.一方,非拘束下で動物のエネルギー消費量を推定するための方法として,水素と酸素の安定同位体で標識された水を動物の体内に投与してその排出率を基に推定する二重標識水法(DLW法)が使われている.本研究では,DLW法を用いて飼育下のコウノトリのエネルギー消費量を測定し,個体の生存に最低限必要と思われる餌生物量を推定するための基礎資料を得た.
供試個体は,兵庫県立コウノトリの郷公園で1個体ずつ隔離して飼育されている成鳥3個体(オス1およびメス2個体)で,2014年12月(冬期)および2015年7月(夏期)に測定を実施した.また,屋根がない開放型の広いケージで飼育され,ケージ内を自由に移動できる成鳥4個体(オスメス各2個体)を対象に,2017年9月(夏期)および2018年1月(冬期)に測定を実施した.
隔離飼育個体のエネルギー消費量の推定値(平均)は,冬期には約1,627kJ/day,夏期には約1,530kJ/dayで,冬期のエネルギー消費量が夏期よりも約6.3%多かった.このエネルギー消費量は,給餌量から計算されるエネルギー量の約58.6(最小値)〜68.5%(最大値)に相当した.開放型ケージの飼育個体の推定値(平均)は,冬期には約1,369kJ/day,夏期には約1,546kJ/dayで,隔離飼育個体との明瞭な違いは確認されなかった.