| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-469 (Poster presentation)
農業の近代化・効率化により水田は、水路や畦のコンクリート化が「圃場整備」として急速に進行している。圃場整備は水田を繁殖や餌場に利用する両生類、爬虫類などにとって影響は大きく、個体数減少・生息地縮小の要因となっている。2018年10月坂戸市森戸地区の水田に隣接した三面張りコンクリート農業用水路にて、溜め升から脱出できなくなった高密度の爬虫類・両生類を確認した。現地調査と溜め升からの救出おこない、本事案の発生要因などを探った。
2018年10月13日~11月5日の間、7回捕獲調査(救出)をおこない、溜め升から上流へ約400mのコンクリート農業用水路(以下水路)周辺の踏査も10月21日におこなった。水路の流れは緩やかで、水位はわずか5cm程度であり、底に堆積物はなくヌメリで滑りやすくなっていた。溜め升内でカエル2種、ヘビ類3種計52個体の爬虫類・両生類が確認され、水田環境に依存した種が集中した。また、水田に隣接した雑木林は爬虫類・両生類の隠れ場所や越冬場所と考えられ、周辺一帯は良好な生息地といえよう。
溜め升は深く潜り込んでいる上に複雑な水流であるため、落ちて揉まれると溺死に至る状況下であった。爬虫類・両生類は溜め升に流れ着いたゴミや流木の枝に絡まるなどし、急場を凌いでいたと考えられる。また、水路は溜め升付近では120cmもの深さがあり、確認された種では這い上がることは困難な状況と考えられる。しかし、水路は溜め升から約400m上流の踏査終了地点では深さはわずか30cmであり、素掘り水路との合流点は開口されており、容易に爬虫類・両生類が侵入できる。徐々に流され溜め升に至ることが考えられる。水路へは移動を妨げる障害物はなく、直接水路へ落下する可能性もある。このような無配慮な圃場整備による農業用水路は爬虫類・両生類には脱出が極めて困難なトラップとなり、生態系に影響を及ぼす悪しき事案として関係機関に改善を求めたい。