| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-05 (Poster presentation)
多くの帰化植物が日本に持ち込まれ、分布を拡大している。現在では、都市部においては野生植物の多くが帰化植物と言われており、特にセイヨウタンポポなどのタンポポ属の帰化種は、農村から都市への変化に伴って同属の在来種が消滅し、それと入れ替わるようなタイミングで増殖した(森田,2012)。本研究では、キク科ノゲシ属で在来種とされるノゲシ(Sonchus oleraceus)と帰化種とされるオニノゲシ(S. asper) に注目し、この2種においてもタンポポ属のような帰化種が近縁の在来種に取って代わる現象が生じているかどうかについて、分布と繁殖戦略の観点から、両種の分布、高さと花・蕾の数の関係、成長速度、繁殖干渉に注目し、明らかにすることを目的とした。
本研究は、東京都新宿区の戸山公園、新宿中央公園、おとめ山公園(2017年7月~2018年5月、2か月に一度)、および小平市の小平グリーンロードの一部と小平霊園(2017年11月~2018年9月、2か月に一度)において調査を行った。
調査地の公園等をくまなく歩き、両種の個体数、地点、高さ、花・蕾の数を記録した。オニノゲシよりもノゲシの方が優占しており、また、ノゲシの方が生育に適した季節が長いと考えられた。花・蕾の数は、両種でほぼ違いはなかったが、大きい個体についてはノゲシの方が多かった。採取した種子を使い、室内で生育実験を行い、高さを測定したところ、ノゲシの方が成長が速いと考えられた。繁殖干渉の影響を調べるため、周辺2ⅿ以内にオニノゲシが生えているノゲシとそうでないノゲシから花を採取し、結実率を比較し、オニノゲシにおいても同様の調査を行ったところ、特にオニノゲシは周辺にノゲシが生えている方が結実率が低かったため、オニノゲシはノゲシから繁殖干渉を受けている可能性が考えられた。結論として、帰化種オニノゲシが在来種ノゲシに取って代わる現象は生じていない可能性が考えられた。今後は、室内の人工授粉の実験を行い、詳細に調べる予定である。