| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-06  (Poster presentation)

ため池における水生植物群落の保全と復元について
Conservation and restoration of aquatic macropyte communities in the ponds

*秋山実希(秋田中央高等学校)
*Miki Akiyama(Akita chuo high school)

国内の湖沼やため池では、おもに1980年代から干拓や築堤、水質汚濁が進行し、各地で水生植物の消失が報告されている。秋田中央高等学校では、秋田平野に点在し過去に貴重な水生植物が記録されているため池群を対象に、2017年より水生植物の保全と復元に関する研究を行っている。これまでの研究で、秋田平野に点在する数多くのため池では、水底の過剰な泥の堆積と嫌気化により、ハスなどの浮葉植物の拡大と沈水植物の消失・衰退が引き起こされたことが示された。今年度の研究では、全国のため池から急速に失われつつある希少な沈水植物群落を保全・再生するために、水底に眠る埋土種子相を把握し、現植生との類似性について評価するとともに、これらの利用可能性について考察することを目的とした。天然記念物に指定されている待入堤を含む5つのため池で底泥を採泥し、種子選別法および実生発生法によって埋土種子集団を調べた。各ため池において、現植物相と埋土種子相の比較をおこない、両者の種組成の類似性について把握した。調査の結果、希少種のオオトリゲモをはじめ、現在生育していない沈水植物の埋土種子集団がため池の水底に残されていることがわかった。いずれのため池でも現植物相と埋土種子相の種組成の類似性は低く、現在みられる植生が過去に成立していた植生とは異なることが示唆された。以上の研究を踏まえ、ため池から失われつつある沈水植物を保全・再生するためには、ため池の水をぬいて堆積した泥をさらい、水底の埋土種子集団を活用することが有効であると考える。しかし近年ではため池の利用価値の低下や高齢化による労力不足などから、池の水をぬいて泥をさらう「かいぼり」をはじめとする農事が行われていない。自治体や地域住民、学校などを主体としてため池のかいぼりをおこない、広く地域全体の共有財産としてため池の自然を守っていくことが必要である。


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