| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-16  (Poster presentation)

花由来の野生酵母による還元反応の可能性を探る
Research of Reduction by Wild Yeasts from Flowers

*小林愛佳, 窪内胡桃(清心女子高等学校)
*Aika Kobayashi, Kurumi Kubouchi(Seishin Girls' High School)

 一般的に「酵母」は糖分を取り込み、アルコール発酵により二酸化炭素やエタノールを排出することが知られているが、本校の過去の研究により、グルコース以外にも、セルロースやキシロースを分解する野生酵母が存在する事が分かっている。また、先行研究によると、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)に特定の有機化合物を不斉還元する能力があることが報告されている。そこで、これと同等の能力が野生酵母にもあるのではないか、更には、他の有用な能力ももっているのではないかと考えて、研究を始めた。
 まずパン酵母による有機化合物の不斉還元能力を確認するために、文献に従って実験を進め、実際に酵母による還元反応が進行することを確認した。その後、ツツジの花から単離した野生酵母を用いて実験を行った。実験後の酵母による基質の還元反応の有無については、生成物と基質を薄層クロマトグラフィーで展開し、スポットのようすとRf値の違いを検討することによって行った。現段階では基質としてMethyl 3 – Oxovalerateを還元した可能性が確認できている。
 パン酵母と花酵母で明らかな違いがみられたのは培養時のグルコースが消失するまでの時間であり、パン酵母よりも花酵母の方が長時間を要した。市販品の粉末状パン酵母を使用したのに対して、培養したままの粘性のある状態の酵母を使用したことだけが違いなので、最初の菌の量の違いと菌自体の能力(反応速度)の違いが理由として考えられる。
 一連の実験には長い時間を要したが、酵母を用いて、基質が他の物質に変換されたことを確認する実験手順を確立することができた。パン酵母と野生酵母では種が異なることが予想され、それぞれが変換できる基質が異なることも考えられる。今後は、パン酵母が還元できる基質の中で、対象を更に拡げて調べていきたい。また、薄層クロマトグラフィーで分離できる物質について、その詳細な解析方法を現在検討している。


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