| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-18 (Poster presentation)
世界的にグリーンタイドが問題となっているが,その発生原因は詳しく解明されていない。グリーンタイドの発生要因として,湾外からのアオサの流入・堆積と湾内でのアオサの発生・増殖が挙げられる。その先行研究は潮流に注目したものと,気温,日照時間,栄養分であるNとPに注目したものがある。そこで私たちは,新たにNとP以外の栄養分にも注目し,グリーンタイドの原因を解明することを目的に研究を始めた。
私たちは,予備実験として先行研究でも着目されていたNに着目し,人工海水とNを含む液肥中でアオサを培養する実験をおこなった。その結果,人工海水中で培養したアオサは成長したが,液肥を加えたアオサは成長しなかった。このことから液肥中のN以外の栄養分がアオサの成長に関係していると考えた。そして,人工海水中に含まれている主要な栄養分であるMg,Ca,S,K,Fe,Nに着目した。
アオサの成長にこれらの栄養素が関係していることを確かめる実験1をおこなった。NaCl溶液とNaCl溶液にこれらの栄養素を化合物として入れた溶液を比較対象とした。その結果、NaCl溶液に栄養分を入れた溶液でのみ成長した。
そこで、これらの栄養分のうちの少なくとも1つの栄養分がアオサの成長に関係していることがわかった。
次に,Mg,Ca,S,K,Fe,Nのうち、どの栄養分がアオサの成長に関係しているかを調べる実験2をおこなった。NaCl溶液に栄養分をそれぞれ1種類ずつ抜いた溶液を比較対象とした。その結果,Mg,Ca,S,Kがアオサの成長に関係していることがわかった。したがって,グリーンタイドの原因を解明するためには、先行研究で着目されていたNとP以外の栄養分にも着目すべきである。
今後は,グリーンタイドが抑制される詳しい栄養分の濃度の解明,またその実験で得られた理論値と実際にグリーンタイドが発生している海域の水質データを比較,検討したいと考えている。