| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-24 (Poster presentation)
六甲山の再度公園(ふたたびこうえん)におけるキノコの多様性を明らかにする活動を、兵庫きのこ研究会、兵庫県立人と自然の博物館、神戸市立森林植物園などと連携しながら行っている。今回は同公園の長期観察記録から、菌根菌や腐生菌の気象条件の感受性の差を選好指数から比較した。さらに17年間の季節ごとのキノコ出現順位の増減を調べ、気象要因との関連性について考察した。
六甲山再度公園には、同定不確定種を含め、約1000種類のキノコが確認されている。そのうちの確認回数の少ない希少種が全体の多様性を支えている(2010)。そこで2001~2010年までの出現頻度上位のキノコ105種を対象に、気温と降水量の好みを選好指数から調べた。その結果、菌根菌では高温多雨環境を好むキノコが多く、樹木の光合成条件の有利な環境に、多くのキノコが同調していると考えた。一方腐生菌の木材腐朽菌では、気温や降水量の好みに幅があった。これらのキノコは、樹木内の穏やかな環境で、種を変えながら季節を問わず樹木を分解していると思われる。また腐生菌の落葉分解菌は多雨環境を好み、気温は好みに幅があることがわかった。水分保持の難しい落葉などから発生するため、降雨条件が最優先されるものと考えられる。
次に季節ごとに菌根菌と腐生菌の出現順位の変動を調べた。すると菌根菌や木材腐朽菌では出現順位が下がるキノコの割合と上がるキノコの割合は、季節による差はあるものの、平均するとほぼ同じであった。環境などの変化に対して、種類を変えて対応しているものと思われる。しかし落葉分解菌では順位の下がったキノコの割合が上がったキノコに対して圧倒的に多かった。年間降水量の変動はあまりみられないので、雨の降り方に影響されているものと思われる。