| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-25  (Poster presentation)

甲殻類に付着する珪藻の種組成
Diatom flora on Crustacean

*中野和真(海城中学高等学校)
*Kazuma Nakano(Kaijo high school)

 珪藻が他の生物の体表に付着することは昔から知られており、ウミガメに付着する珪藻に着目した研究が多く行われてきた。しかしウミガメ以外の生物に付着する珪藻に関しての研究は少なく、特に我々の身近に生息するザリガニ類に付着している珪藻については、イタリアの河川で1件研究が報告されたのみである(E.Flasco et al.2018)。
 そこで本研究ではザリガニ類に付着する珪藻群の基礎的情報を得るため、埼玉県所沢市の溜め池と新宿区立おとめ山公園の池の2か所において、2018年11月頃に複数回、アメリカザリガニの甲羅上の珪藻について調査を行った。埼玉県所沢市のため池は水深が3㎝ほどで水田状を呈しており、底は泥である。一方おとめ山公園の池は上流で湧水が湧いており落ち葉が底に堆積している。
 珪藻はアメリカザリガニの頭胸部の甲羅をこすって採集し、パイプユニッシュで処理後、マウントメディアで封入し検鏡した。封入後、珪藻を無作為に選び同定することで珪藻の種構成を調べた。また顕微鏡下での計数によってザリガニの甲羅1㎠の上に付着している珪藻の個体数を算出した。種構成に関しては周りの環境との比較のため、落ち葉に付着する珪藻についても調べた。
 その結果、ザリガニ上に出現する珪藻は溜め池とおとめ山公園で異なることがわかり、またザリガニ上に出現する珪藻群と落ち葉などに出現する珪藻群の種構成にも、違いが見られることが分かった。さらに甲羅上では場合によりGomphonema属の1種が最優占種となり、占有率が70%以上に及ぶことが分かった。ザリガニごとに甲羅上に付着する珪藻の1㎠あたりの個体数は、少ない個体はほとんど珪藻が確認できないが、多い個体は1000個体程度とザリガニの個体間で大きな開きが見られた。


日本生態学会