| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-27  (Poster presentation)

逆川・岩地川に生息するカワニナの寄生虫に関する研究
A study on the parasites of Semisulcospira

*西田俊哉, 木田大貴, 遠山敬仁, 今津荘吾, 小森一生, 瓦田蒼良(岐山高等学校 生物部)
*Toshiya Nishida, Daiki Kida, Takahito Toyama, Sogo Imazu, Kazui Komori, Sora Kawarada(Gizan high school)

  採集したカワニナを観察していたところ、奇怪な動きをする生物を発見した。それを観察したところ、カワニナを宿主とする寄生虫であることが判明した。特にトビ棘口吸虫の生態と生活環に興味をもち、実験を行った。宿主のカワニナをプリンカップに入れて個別飼育をし、出現する寄生虫を記録、観察した。
  トビ棘口吸虫はカワニナを第一中間宿主とする寄生虫である。セルカリア群体に光を当てたところ、正の光走性を示した。その時の不思議な動きに興味を持ち、このメカニズムを解明するため、観察、実験を行った。群体が動く様子を光学顕微鏡下でハイスピード撮影し、スロー再生動画を観察した。その結果、水をかくように頭部を回転させていることがわかった。次に、顕微鏡と光源の間を紙で遮り、明るさによる頭部の回転数の違いを観察した。計測の結果、明るい時の方がより頭部を活発に回転させていることがわかった。また、頭部の回転数の計測時同様に明暗をつくり、セルカリアのジャバラ構造の尾が縮む本数の違いを観察した。計測の結果、暗い時の方がより多くの尾が縮むことがわかった。これらの結果から、光がより当たる方の単体の頭部が活発に回転し、光が当たらない方の単体が活動を弱めることで、群体として正の光走性を持つことが分かった。
  トビ棘口吸虫の生活環の一部を解明するため、カワニナからセルカリア群体が出て、第二中間宿主である魚に定着したのち、メタセルカリアへと成長する過程を観察した。タモロコがいる水槽にセルカリア群体を入れたところ、タモロコは興味を示し、口に含んだが、すぐに吐き出した。吐き出された群体を観察したところ、頭部が取れ、尾だけになっていることが分かった。18日後、タモロコの鰓表面に粒状の生物を発見した。観察の結果、トビ棘口吸虫のメタセルカリアであることが分かり、トビ棘口吸虫の生活環の一部を解明することができた。


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