| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-29  (Poster presentation)

鱗翅類の撥水性に関する分析
Analysis on water repellency of Lepidoptera

*中山和奏(神戸大学附属中等)
*Wakana Nakayama(Kobe Univ. Secondary)

1.はじめに
鱗翅類とはチョウやガなどの鱗粉を持つ昆虫である。強い撥水性で知られるハスの葉に比べ鱗翅類の翅は、撥水性に加え軽さやしなやかさ等の特徴がある。よって鱗翅類の翅はハスの葉にない仕組みがあると考え分析した。これによりバイオミミクリの視点で役に立つ情報を得たい。

2.背景技術
撥水とは水をはじく性質のことである。ハスの葉の撥水はロータス効果と呼ばれ、表面に細かい凹凸があり、凹凸間隔が約10um以下だと、そこに水が入れず撥水する。撥水性は静止液体の自由表面が固体壁に接する場所で液面と固体面とのなす角である水接触角で表され、大きい角度の方が撥水する。水接触角が90°を超えると撥水性、150°を超えると超撥水性と呼ばれる。

3.課題
⑴撥水性を評価しチョウの種類による違いを分析
⑵チョウの翅を拡大観察し撥水要因を調査

4.実験方法
⑴撥水性評価の為、ピペットにより5ulの水を9種類のチョウの翅に滴下し、それを真横から撮影して接触幅と水滴の高さを測りArctanθ/2法を用いて水接触角を計算した。
⑵撥水原理を探る為、電子顕微鏡により翅の表面を観察した。

5.結果
⑴実験に用いた全チョウにおける翅の全部位において140°以上の水接触角が見られた。
⑵チョウの翅を拡大観察すると鱗粉の表面に間隔約1.4umの縦筋と間隔約0.5umの横筋があり、10um以下の網目構造であった。そして鱗粉の左右間隔は10um以上だが鱗粉の上下間隔は10um以下で敷き詰められていた。

6.結論と考察
一枚一枚の鱗粉は10um以下の網目構造により撥水性を持ち、それらが屋根瓦のように敷き詰められ、翅全体として撥水していた。全ての翅は140°以上の水接触角があり超撥水性に近い。
この網目構造は通気性がよいと思われ、ハスの葉には無い特徴である。また鱗粉はハスの葉よりも軽さという点でも優れている。これらの構造を応用すれば撥水性や通気性、軽さを兼ね備えたシューズやレインウェア等の製品の開発に役立てられると考えた。


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