| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-30 (Poster presentation)
石川(大和川水系)の最上流域に位置する滝畑ダム湖(大阪府)は,海からアユが遡上することは不可能であるが,2017年,そこでアユを発見した。このアユがどこから来たのかという疑問を持ち、このアユの由来や生活史を明確にすることを目的に研究を行った。
滝畑ダム湖,ダム湖流入河川,石川下流域の3か所で,2017年8月~2018年8月まで調査を行った。水上目視で滝畑ダム湖のアユの全数を推定した。投網を用いてダム湖流入河川と石川下流域でアユを採集し,それぞれの体サイズや産卵期などを調査した。さらに,大阪市立大学理学部動物機能生態学研究室の協力の下,滝畑ダム湖,石川下流域,両側回遊型,琵琶湖のアユのそれぞれをDNA分析し,由来について調べた。
生態面では,滝畑のアユと琵琶湖系アユを比較した結果,両者の特徴は酷似していた。またDNA分析より,滝畑のアユは琵琶湖系に由来すること,小集団化していることが分かった。
琵琶湖系アユを滝畑ダム湖に放流したという記録が残っていた。また,2017年8月から1年間滝畑のアユを追跡したことで世代交代を確認した。これらのことから,琵琶湖系アユが滝畑ダムに定着したと言えるが,琵琶湖系アユがダム湖に定着したという報告は本研究が初めてである。これまで琵琶湖系アユがダム湖に定着できないとされてきたのは,流下仔魚が高水温によって死滅することが理由だった。琵琶湖系アユが滝畑ダムに定着できた要因は,滝畑ダムが他のダムに比べて低水温であることにあると考えた。
琵琶湖系アユが滝畑ダム湖に定着できた理由をさらに明確にしたい。また,今回十分に調査できなかった滝畑ダムの湖内に残留するアユについて調査を進めたい。