| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-38 (Poster presentation)
この数年、先輩たちが調査を繰り返し行ってきたが、石川(大和川水系、大阪府)の本流にはカワニナ類の生息を確認することができなかった。しかし2017年、石川から分岐する3面コンクリートの水路で多数のチリメンカワニナが生息しているのを確認した。その水路で継続的に調査を行ったところ、チリメンカワニナは大雨による増水後に激減したが、約1か月で元の生息密度に回復した。そこで、チリメンカワニナが生息密度を回復させる仕組みを明らかにすることを目的に研究を行った。
チリメンカワニナが多数生息する水路で2018年5月から2018年8月まで定期的に調査を行った。水路の中央付近の上流側と下流側の2か所にコドラート(50㎝×50㎝)を設置し、コドラート内のチリメンカワニナの密度や大きさ(殻長)を調査した。
調査の期間中に豪雨(台風など)による増水が2回発生した。1回目の増水では、下流側で増水前にほとんど見られなかったチリメンカワニナの稚貝が増水後には多数見られた。2回目の増水では、増水前に下流側で多数見られた稚貝が増水後にはほとんど見られなくなり、増水前に上流側でほとんど見られなかった稚貝が増水後に多数見られた。
2017年の調査結果から、今回の増水時もチリメンカワニナの生息密度は減少したと考えられる。1回目の増水前後の調査から、チリメンカワニナは増水時に流下し生息密度が減少するが、その後、生き残った一部が増殖することで生息密度を回復している可能性が考えられる。また、2回目の増水前後の調査から、チリメンカワニナは増水をきっかけに上流側に移動する習性をもつ可能性が考えられる。
今回の調査ではチリメンカワニナが増水後に増殖や移動を行ったことを明確にすることができなかった。今後はチリメンカワニナに個体識別を行い、移動の詳細について明確にしたい。