| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-40  (Poster presentation)

マリーゴールドによる殺センチュウ効果の検証
Verification of the effect of killing the nematode by marigold

*洲河青, 池田拓人, 小島凛太郎, 瀧口紗矢, 福原悠介, 元村亘輝(兵庫県立神戸高等学校)
*Jyou Sugawa, Takuto Ikeda, Rintarou Kojima, Saya Takiguchi, Yuusuke Fukuhara, Kouki Motomura(Kobe High School)

  近年農業生産においてコンパニオンプランツが注目されるようになってきた。実際に複数の品種のハーブ類が農業生産の場で用いられている。しかしその効果が科学的に実証されているものは少なく経験則でしか確認できていないものが多い。マリーゴールドもその一種である。マリーゴールドには作物に奇形などの被害を与えているセンチュウの土中における個体群密度を低下させる効果があるといわれているが、その効果は実験系を立てて検証されていない。そこで今回実験系を立てて検証を行うことにした。私たちはマリーゴールドが何らかの化学物質を分泌しており、それがセンチュウに変調をきたしセンチュウが死亡するという仮説の元、検証を行った。今回の実験でマリーゴールドの根からセンチュウを誘引する何らかの化学物質が放出されており、その誘引物質と殺センチュウ物質は異なる物質であるということが分かった。また、殺センチュウ物質は水溶性物質ではないと検証できた。さらに、センチュウ捕食性細菌が流入しない環境で実験を行ったにもかかわらず、センチュウが死亡したことより、マリーゴールドがセンチュウの天敵であるセンチュウ捕食性細菌の活動を促進させ、センチュウ捕食性細菌がセンチュウを死亡させるという説は適切ではないことが示された。結論としてセンチュウはマリーゴールドの根に誘引され、根を食べることによって死ぬと考えられる。また、誘引効果を示したのはマリーゴールドの根のみであったため、センチュウ対策のためには根だけを土壌にすきこむ方がより効果が得られるのではないかと考えられる。しかし具体的にどの化学物質が影響しているか同定することが出来ていないことから今後は化学物質の同定に取り組みたいと思う。将来的には農薬を用いた従来のセンチュウ駆除法に代わる画期的な駆除法が開発されることを心より期待している。


日本生態学会