| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-43  (Poster presentation)

日本近海に生息するMicrocotyle属単生類の系統および分類学的研究
Phylogenic and taxonomic study of Microcotyle monogenea in the sea near Japan

*小野夏実, 西尾彩里, 瓦田優香, 井上愛菜, 香村祐佳(白陵高等学校)
*Natsumi Ono, Ayari Nishio, Yuka Kawarada, Aina Inoue, Yuka Komura(Hakuryo high school)

2008年に新たに分類されたメバル複合種群3種の鰓に寄生するコガタツカミムシ属単生類として、Microcotyle caudata (Goto, 1894)とM. sebastisci (Yamaguti, 1958)が報告されている。
M. caudataは三津浜で発見され、M. sebastisciは垂水のカサゴから発見され、その後メバル複合種群からも発見された。両種の分類形質は卵サイズと精巣数とされているが、卵を持つ個体は少なく精巣数には重複がある。そこで本研究では、タイプ標本を含めた形態観察と分子系統解析を用いて、メバル複合種群に寄生するコガタツカミムシ属単生類の分類学的再検討を行った。分子系統解析をするにあたり、塩基配列の情報データベースにおける本属単生類の塩基配列の情報が少ないため、独自にウミタナゴ複合種群に寄生する本属単生類を採集し、解析に利用した。
2014年から釣りにより、アカ・クロ・シロメバル、M. sebastisciのタイプ宿主であるカサゴ、ウミタナゴ複合種群を採集した。メバル類から採集した単生類ではM. caudataおよびM. sebastisciの形質が確認された。形態観察および分子系統解析の結果、両種で違いは見られなかった。また、カサゴからは形態・分子から識別される未記載種が発見された。分子系統解析の結果、ウミタナゴ複合種群に寄生していたコガタツカミムシ属単生類はメバル類やカサゴに寄生していたコガタツカミムシ属単生類や既知種とは識別された。
以上のことから、M. sebastisciはM. caudataのシノニムであると考えられた。一般的に、単生類は宿主特異的とされているが、M. caudataの宿主範囲が2科3属7種に及ぶことが分かった。メバル類やカサゴからは本属単生類が原因の魚病が報告されており、未記載種を考慮した検討が必要である。また、2007年にウミタナゴ複合種群は新たに2亜種に分類されているが、寄生虫相は明らかにされていない。そのため、今後再記載に向けた再調査をしていきたい。


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