| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-44 (Poster presentation)
日本産トゲワレカラCaprella scauraは形態から3亜種(C.s.diceros, C.s.typica, C.s.hamata)に分類される。瀬戸内海各地をはじめ本州西部でトゲワレカラを採集し、亜種を同定した。亜種を同定できないものについては無理に同定せず、不明個体として扱った。
各個体からDNAを抽出し、ミトコンドリアDNAのCOI領域と核DNAの18S ribosomal RNA領域についてPCR法によるDNA増幅を行った。なお両領域については種特異的なプライマーを設計した。業者に委託してシーケンスを行った。18S ribosomal RNA領域については波形を確認し、多重塩基を決定し、データを修正した。
COI領域の解析では、AおよびBグループに分かれた。Aではdicerosが70.1%、typicaが10.0%を占め、dicerosが優勢であった。Bではdicerosが38.5%、typicaが61.5%を占め、typicaが優勢であった。
核DNAの18S ribosomal RNA領域の解析では、約650bpの解読が可能なホモ接合体に3つのハプロタイプがみられた(XX、YY、ZZ)。さらにおそらくZとYのヘテロ接合体であると推測されるYZ、およびXとホモ接合体としては未確認WとXのヘテロ接合体であると推測されるXWが確認された。
AグループにはYおよびZのホモ接合体(YYおよびZZ)が見られ、BグループにはXのホモ接合体(XX)がみられた。YYおよびZZはBグループには見られなかった。XXはAグループには見られなかった。Aグループに見られたヘテロ接合体はYZであると推定される。またBグループに見られるヘテロ接合体はXを含む可能性がある。AグループにはXが、BグループにはYおよびZがみられなかったことからAグループとBグループには遺伝的な交流が存在しない可能性を示している。両グループは同所的に生息することから、生殖的隔離が存在する可能性がある。
核DNAの1領域で結論を出すのは拙速であると思われるので、今後は核DNAの複数領域について解析を進めていきたい。さらにA・Bグループの交雑実験や形態的差異の観察を行いたい。