| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-45 (Poster presentation)
タモロコ(Gnathopogon elongatns elongutus )はコイ科タモロコ属に属する淡水魚で、西日本の河川や湖に広く分布しており、近縁種に琵琶湖固有のホンモロコがいる。地域や環境要因で形態形質の地理的変異も大きいことが知られている。
古瀬池は白陵高校に隣接する農業用ため池の一つであり、近隣の山から流れてきた雨水をためたものである。古瀬池にはタモロコが生息しており、その中に体高や喉部がホンモロコと酷似している個体を確認した。そこで、本研究では古瀬池に生息する、記載とは異なった多様な形態を持つタモロコの形態観察と塩基配列解析の2方面から形態の違いを検討した。
2018年4月から古瀬池でタモロコ40個体を仕掛けと網で採取し、形態観察を行った。その後タモロコの記載とは一致しない形質を持つ個体の胸ビレからDNAを抽出し、cytb領域をシークエンスして系統樹を作製した。
タモロコに特有の形質として、側線下方の暗色線の数が1~3本、口ひげは瞳孔径より長い、などが報告されている。しかし、すべての形質が記載に一致する個体はなかった。そこで、側線下方の暗色線の数や口ひげの長さの形質が記載に一致しなかった個体の塩基配列を解析し、系統樹を作製した。それによると、これらのタモロコはすべて高い統計的支持率でタモロコと同じクラスタに入った。
本研究の検査個体で形態観察では完全にタモロコの記載と一致する形質を持つ個体はなかった。しかし塩基配列に違いは見られなかったことから、古瀬池のモロコ属魚類はタモロコであると示された。この記載と一致しなかった形質は、隔離された環境で生じた古瀬池のタモロコに特有の形質である可能性がある。今後はそれを裏付けるために周辺のため池や近隣を流れる天川のタモロコと比較検討していきたい。