| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-46 (Poster presentation)
ゴキブリは人間の居住空間内に生息し、時には集合していることもあり、一般に、人々から嫌悪感や恐怖感をもたれている昆虫である。住宅にゴキブリが現れた際には、殺虫剤を用いて駆除することもあるが、雑誌やスリッパ、丸めた新聞で叩き潰すこともある。一方で、叩いて駆除しようとした際にゴキブリに逃げられ、その後、不安な夜を過ごした経験がある人も多いだろう。私たちは、人間の攻撃から逃げたゴキブリはその後どのように振る舞うようになるか疑問に思い、調べることにした。私たちは、人間の攻撃を受けたゴキブリは、そうでないゴキブリと比較して移動速度が速くなると仮説を立てた。
本研究では、ゴキブリが人間から攻撃をされる実験区と、攻撃をされない対照区を作り、両者の間でゴキブリの行動に差が生じるか調査した。実験区と対照区を作るために、集団で飼育していたワモンゴキブリを、直径12cmの円柱状のカップに一個体ずつ隔離し、1週間飼育した。飼育期間中の5日間、午前8時から午後4時まで1時間に一回カップを真上から手で叩き、これを実験区とした。単独飼育中にカップを叩かない区を対照区とした。実験区と対照区のゴキブリは飼育期間後に実験アリーナへ移し、30分から45分間、全明条件下で自由に行動させてその行動を動画として記録した。その後、個体追跡フレームワークUMA Trackerを用いて、動画から1/30秒ごとのゴキブリの位置座標を計測し、ゴキブリの移動時の平均速度、静止時間の割合を計算した。サンプル数が実験区と対照区でそれぞれ5個体ととても少ない現状ではあるが、移動時の平均速度は両者では差がみられず、実験区の個体は対照区の個体に比べて静止時間割合が多かった。今後、サンプル数を増やし、外敵から逃げたゴキブリの行動について考察する。