| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-47 (Poster presentation)
2015年度から継続している日本産亜種メジロと台湾・中国産の亜種ヒメメジロとの声紋による比較研究について、本年度までに以下のようなことが判明した。
1.調査方法
昨年度は台湾北部、本年度は台湾中部で亜種ヒメメジロの地鳴きをICレコーダーを用いて録音し、それらと日本産亜種メジロの地鳴きをフリーウェアのRaven Lite を用いて声紋分析を行った。また、画像化した声紋を数値化し、両亜種を明確に区別できる指標について研究を行った。
2.亜種ヒメメジロの声紋との違い
亜種メジロの地鳴きは澄んだ声に聞こえ、声紋が細い傾向があるが、亜種ヒメメジロの声は亜種メジロより濁った声に聞こえる傾向があり、声紋がやや太い。そこで両亜種の地鳴きの中央における周波数の幅を計測し、それが両亜種の声の違いを反映する指標となると考えて研究を行ったが、鳴き声の残響をどこまで見るかなどの問題にぶつかり、うまく両亜種の差を見つけることができなかった。そこで他の指標を探してみたところ、両亜種の地鳴き全体の周波数の幅と、鳴き始めの周波数の高さが明らかに異なり、この2点を指標とすることで両亜種をほぼ見分けることができることがわかった。ただ、♀と考えられる地鳴きは後述のように音程に差がなく、またこれまでに判定に使えるほどのデータを得ることができなかった。
3.メジロの地鳴きの雌雄差
メジロの地鳴きには、♂は高い声から低い声に緩やかに音程(周波数)を下げる地鳴き、♀は非常に短い時間の間に音程を一気に下げ、その後、同じ音程(周波数)を維持して鳴く地鳴き、というように明瞭な雌雄差があることが我々の研究よりほぼ判明している。標識調査で捕獲したメジロの羽毛の遺伝子とその鳴き声をマッチングさせることにより、この識別の正確さを確定させる予定であったが、本年度も捕獲したメジロが全く鳴かなかったため進展はなかった。