| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-52 (Poster presentation)
日本国内で、タイワンシジミ(Corbicula fluminea)によってマシジミ(Corbicula leana)が淘汰されていることが問題となっている。タイワンシジミは、元来中国、台湾を中心とした東アジアの淡水域に住む雌雄同体の二枚貝である。本種は、食用として輸出されたシジミ類に混入して、世界各地に運ばれ定着している。日本国内では、1985年頃に移入が確認され、徐々に分布の拡大が明らかになった。日本では、マシジミが存在していたが、現在はタイワンシジミによりその生息数が激減している。タイワンシジミがマシジミとの生存競争で勝ち残っていることには大きな理由があり、タイワンシジミの生命力や繁殖能力の高さとシジミ特有の雄性発生にある。タイワンシジミはマシジミと比べて、比較的汚れた水や護岸においても生息が可能であり、非常に強い生命力を有している。また、雄性発生とは交配の際に、子の形質を決定する雄側の核DNAのみが子に現れ、ミトコンドリアDNAは雌側のみから遺伝するという発生方法である。タイワンシジミは雌雄同体であり、マシジミに比べて大量の精子を放出するため、マシジミとの交雑の際に、より多くのタイワンシジミの子孫を残す可能性が非常に高くなる。
タイワンシジミには、マシジミと同色の個体が存在するので、見分けることが難しい。そのため、神戸版レッドデータでは、準絶滅危惧種(今のところは絶滅危惧種となる可能性はないが、将来的にはその可能性がある種)となっているが、正確なマシジミの生息状況は分かっておらず、神戸市内において、現在どれだけマシジミが生息しているかが明らかではない。そこで、我々は外形的特徴と遺伝子(核DNA、ミトコンドリアDNA)の二方面から種類を同定し、マシジミが生息している可能性を明らかにした。