| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-54  (Poster presentation)

カタツムリはどうやって餌を探している?
How does the snail look for food?

*志津隆行, 中島岳人, 下総郁子, 佐賀達矢(岐阜県立多治見高校)
*Takayuki Shizu, Takehito Nakashima, Ikuko Shimofusa, Tatsuya Saga(Tajimi Senior High School)

 動物は視覚や嗅覚を用いて餌を探す種が多い。私たちはカタツムリが視覚と嗅覚のどちらを主に使って餌を探しているのか調べた。本研究では、ヒダリマキマイマイ(以降、カタツムリとする)に緑色の上質紙を餌として与えて飼育し、これを実験に用いた。

 初めに、カタツムリが食べる上質紙に色の好みがあるか調べた。私たちは、カタツムリは野外では植物の葉を食べ、今回の飼育環境では緑色の上質紙を餌として与えたため、緑色の上質紙を好んで食べると仮説を立て、これを検証した。大型シャーレの内側面に等間隔に青、緑、黄、朱、赤の5色の上質紙を貼り付け、シャーレの中心にカタツムリを置き自由に行動させた。カタツムリが食べた上質紙の色と量を、24時間動画を撮影して調べた。本実験を6個体に対して行った結果、個体によって食べた上質紙の色が異なり、かつ、緑色の上質紙を最も食べた個体は1個体のみだった。この結果から、緑色の上質紙を好むという仮説は支持されず、個体によって色の選好性があることが考えられた。さらに、個体によっては全く食べない色の上質紙もあった。

 次に、カタツムリが視覚でなく、嗅覚を用いて餌を探している可能性を調べた。各個体が好む色の紙を匂いが出ないようにフィルムで覆ったものと、先の実験で各個体が食べなかった色の紙(フィルムで覆わない)を選択させる実験を行った。その結果、全ての個体がフィルムで覆っていない紙の方へ移動した。この結果から、カタツムリが嗅覚を用いて餌探しをしている可能性と、フィルムの匂いを嫌っている可能性の2つが考えられた。カタツムリがフィルムの匂いを嫌って、好む色の方へ来なかった可能性を調べるために、紙を覆うフィルムの一部に穴を開けてカタツムリに提示したところ、カタツムリが寄ってきて紙を食べた。この結果から、カタツムリは嗅覚を用いて餌探しをしていることが分かった。


日本生態学会