| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-55 (Poster presentation)
私たちは理科の教科書に載っている始祖鳥がどのようにして飛んでいたのか気になったので、模型を作成し、現在の鳥類との滑空能力を比較した。
始祖鳥、カラス、トビ、ツバについて、翼と尾羽の形に注目してポリエチレンボードで模型を作成した。カラスとトビは翼の形がよく似ていたため、1つの模型として扱い、模型の面積・重量は全て同じにした。これらの模型におもりをつけ、発射台から10回ずつ滑空させ、平均値を求めた。
まず、最適重心位置のとき、滑空距離を測定した。その結果、始祖鳥の滑空距離が他の型と比べて1.4倍以上長く、始祖鳥は現代の鳥類と比べて滑空能力が優れていたことがわかった。次に、最適重心位置から重心を1㎝前にずらし、滑空距離を測定した。その結果、始祖鳥型の滑空距離は10%程度しか低下しなかったのに対して、他の型は40%以上低下した。このことから、始祖鳥は現代の鳥類と比べてバランスを保つ能力が高かったことがわかった。最後に、すべての型の尾羽を始祖鳥型にし、滑空距離を測定した。その結果、カラス・トビ型やツバメ型は顕著に滑空距離が伸びたことから、始祖鳥の尾羽は体を安定させて滑空しやすくする役割があることがわかった。
以上の3つの実験から、始祖鳥から現代の鳥類に進化するにつれて、体全体、特に尾羽の安定性が低下し、滑空能力が低下している。このように、一見すると悪い方向へ進化したのはなぜだろうか。進化するとともに移動距離が長くなり、羽ばたき飛行などを習得し、翼や尾羽を動かしてバランスをとるようになったため、滑空する機会が少なくなり、邪魔になった大きな尾羽が小型化し、結果的に滑空能力が低下したと考えられる。