| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-56 (Poster presentation)
本研究では、「市販の虫除け剤を用いず蚊から身を守ることは可能か」という問いに対して、安全性に重点をおき、代替成分という観点からその方法を提案することを目的とし調査を行った。
皮膚面・空間内において蚊に忌避効果を示す成分の有無、その詳しい種類について4段階の実験により調査を行った。その結果として、第1実験から蚊には嫌がる成分があり皮膚面においてそれらの成分が有効に働くことが分かった。さらに、第2実験においては調査対象を広げて実験を行い、それらの成分が空間内においても効果を発揮することを確認できた。第3実験においては、第1実験と第2実験で忌避するかどうかの結果が異なったα-ピネンについてのより詳細な研究を行い、成分の含有量が多いほど強い効果を発揮する可能性が大きいことを示した。第4実験においては効果があるとして絞り込んだ成分を調合して忌避剤を作成し、その皮膚面・空間内における効果を実験において確かめた。
以上の4種類の実験の結果より、蚊には市販の虫除け剤以外にも忌避する成分が存在し、虫除け剤と同等以上の効果が期待できることが分かった。具体的には、ラベンダー、ユーカリ、ティートゥリー、オレンジスイート、デンタルリンスの調合液が忌避剤としての効果を発揮することが分かった。また、忌避作用を示すこれらの物質の共通成分として、リモネン、1・8シオネール、メントール、エステル、β-ピネンがあげられることも判明した。これらの成分を用いて忌避剤をつくることを虫除けの方法として提案したい。
さらに第5実験では、調査中に発見した新たな観点である温度についての調査も行った。その結果、蚊は35℃以上になると活動を低下させ、吸血時に必要な一定時間を継続して飛翔することが不可能になることが確かめられた。
結論として、リモネンなどの代替成分からの忌避剤の作成や、35℃以上とする温度管理などを蚊への予防策として提案する。