| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-58  (Poster presentation)

1913年購入のヤマネコ剥製標本はツシマヤマネコか?
Is a stuffed wildcat specimen purchased in 1913 Tsushima Yamaneko(Prionailurus bengalensis euptilurus) ?

*和田夏穂, 松本涼佳, 矢野琢巳(大阪府立岸和田高校)
*Natsuho Wada, Suzuka Matsumoto, Takumi Yano(Osaka Pref Kishiwada H.S.)

岸和田高校が大正2年(1913)9月購入したヤマネコの剥製標本について、外部形態(大きさと模様)から、ベンガルヤマネコPrionailurus bengalensis(ツシマヤマネコやイリオモテヤマネコを含む)と推定された。模様からは、北方アジア亜種に近いことがわかった。そこで、分子系統学の手法を使って、種の同定を行い、より詳しく調べた。
方法:
①毛髪・爪からのDNA抽出キットを使って、DNAを抽出する。
②亜種以下の違いを判定するために、ミトコンドリアのcontrol regionのprimerを設計した。(参考文献にあるprimerも使った。)
③幾組かのprimerセットで、PCRを行った。増幅が成功したものについて、塩基配列を調べた。(発注:ダイターミネーター法)
④分子系統樹を描き、剥製標本との類縁関係を調べた。
結果と考察:
DNAが断片化していて、250塩基程度以上のPCRはうまく増殖できなかった。PCRが成功した部分(118bp)について、作成した系統樹より、岸和田高校のヤマネコ剥製は、朝鮮半島のヤマネコではなく、対馬産または極東大陸産のものに近い別のハプロタイプ(登録されているものにはないタイプ)とわかった。登録されているツシマヤマネコ8個体のハプロタイプはすべて同一で、遺伝的多様性がない。対馬産であれば、かつては遺伝的多様性があったかもしれない。残念なことに繰り返し部分の塩基配列(motif)が確定できなかったので、対馬産と確定できなかった。
参考文献:
①Tsutomu Tamadaほか: ZOOLOGICAL SCIENCE 25: 154–163 (2008)
②増 田 隆 一:地学雑誌 Journal of Geography 105(3) 354-363 1996


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