| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-61 (Poster presentation)
予備的な実験でバラタナゴを使って人工授精を行ったところ、受精後4日ほどで心臓が拍動し始めた。そのような魚体の形成に興味を持った。特に、体の形成はどんな条件によって決まるのかに疑問を持ち、卵の状態と水温の2つの観点で調査することにした。
タイリクバラタナゴは産卵期が3月から9月までと非常に長く、イシガイ科二枚貝に産卵する。産卵期になるとオスは婚姻色、メスは産卵管が伸びる。産卵管の長さによって抱卵状態が判断でき、卵を採取しやすいので今回の実験に使用した。卵の状態が体の形成にどのように影響するのか具体的に予想できなかったが、水温は変温動物の魚類にとって成長速度に影響すると予想した。
調査は以下の手順で行った。
➀産卵管の長さが異なる三個体から卵を採取し、人工授精を行った。
②採取した受精卵をシャーレ1・2・3に分け、シャーレ1・2を30℃(室温)で、シャーレ3を20℃(インキュベーター)で保存し、成長の様子などを調べた。
③体の変化を観察するため、肉眼や双眼実体顕微鏡などで30日間観察し、写真やスケッチ、記録をとった。
その結果、産卵管の長さと採卵数は比例関係にあり、産卵管の長い個体からは異常発生がほとんどなかった。このことから、産卵管の長い個体は卵の状態が良く、卵の状態は体の形成に影響したと考えられる。また、水温が高いほど成長速度が速いことが分かったが、水温が高い方は死亡率も高くなることが分かった。産卵期は3月から9月までと長いが、今回の結果から考えると、水温があまり高くない春季に産卵する方が有利だと考えられる。
今後、長い産卵期の中で、どの時期に産卵数が多いのか調査し、水温と仔魚の生存率の関係などについてさらに詳しく調べていきたい。