| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-62  (Poster presentation)

円網の巣を作るクモの縦糸には本当に粘球がないのか
Is there really not an adhesive ball in the spider warp making spider web nest?

*筧迅, 杉浦太智, 橘広将, 西木杏佳(兵庫県立西脇高等学校)
*Jin Kakehi, Taichi Sugiura, Hiromasa Tachibana, Kyoka Nishiki(Nishiwaki senior high school)

1.研究の動機と目的
 2017年以来、クモの糸の研究を継続的に行っており、コガネグモの巣で、縦糸にも粘球がみられることを確認した。粘球は、粘着物質が球状になったもので、クモが糸を張る際に分泌物として付着させるものである。先行研究では、クモは粘球のついていない縦糸の上を歩行するとされており、これに矛盾する結果である。一般に粘球は縦糸にも付着しているのだろうか。あるとすれば、クモは粘球のある糸の上をどのように歩いているのだろうか。本研究には、本校に生息する円網を作るクモ5種類(コガネグモ、ナガコガネグモ、オオシロカネグモ、オニグモ、ゴミグモ)を各20個体ずつ用いた。

2.観察の結果と考察
 粘球は、横糸か縦糸かによらず、いずれの糸にも一般的にみられる。中心繊維のまわりに数本の繊維が規則的にまきつく螺旋構造をもつ縦糸は太く、そこに付着する粘球は大きく、粘球間の距離は広い。一方横糸は螺旋構造をもたない繊維からなり、中小の粘球が交互に規則正しく配列している。粘球間の距離は小さい。異種、同種を問わず、クモの大きさが大きいほど巣の半径は大きく、粘球や粘球間の距離も大きい。大きいクモほど、巣の中心から粘球がみられるまでの距離が大きい。クモが獲物を待って待機している領域には粘球がない。これらの関係は、縦糸、横糸を問わずに共通である。
 顕微鏡でクモの脚を詳しく観察すると、クモの脚には多くの毛が生えており、脚で粘球にやわらかくさわってみると、粘球はのびて脚の毛に付着する。巣の中心で獲物を待つクモが、自身の脚によって粘球を剥がしとっている可能性が考えられる。
オオシロカネグモが巣を張った直後には縦糸、横糸の区別なく巣の中心部にも粘球が確認できるが、その後普段生活する中心部の粘球はすぐに失われ、獲物がかかった糸の部分からも粘球が失われる。破れた巣糸の部分はすぐに修繕し、その糸には粘球がついている。


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