| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-67 (Poster presentation)
1.研究の動機と目的
2016年からゴキブリを継続的に研究している。昨年クロゴキブリが筆者らに向かって滑空してきた。クロゴキブリは滑空できるのにチャバネゴキブリはできないのはなぜか疑問に思った。試料は、クロゴキブリ515個体、チャバネゴキブリ535個体である。
2.クロゴキブリとチャバネゴキブリの比較
(1)翅の構造
前翅(1枚目の翅)は比較的硬くて厚く後翅を保護している。後翅は2つに折りたたまれて前翅の内側に収納されている。本研究では、外側を2枚目、内側を3枚目とよぶ。2枚目と3枚目の翅は翅脈のない膜で連結している。1枚目の翅が開くと2枚目の翅が斜め上へ開き、連動して内側に折りたたまれていた3枚目が外套のように開く。クロゴキブリとチャバネゴキブリで構造は同じである。
(2)翅脈の形状と断面
共に翅脈は翅の支持管として翅が変形することを防ぐ強度を持ち、軽量化と弾力化を実現している。翅脈の断面は円形で断面積は、種が異なっても1枚目~3枚目の翅が異なってもほぼ半径0.05mm前後である。
(3)成長と翅脈の本数
共に中齢幼虫で翅が形成され始める。中齢幼虫の翅の翅脈は成虫と同数である。チャバネゴキブリの翅脈の本数はクロゴキブリの4/5である。
(4)体重と翅の面積の割合
クロゴキブリは、体重が異なっても3枚それぞれの翅の面積はほぼ同じである。チャバネゴキブリは、体重の増加に伴って1枚目の翅の面積が大きくなる。2枚目と3枚目の面積は変わらない。体重1gあたりの翅の面積の割合は、クロゴキブリに対してチャバネゴキブリは約2倍である。
3.まとめ
滑空できるクロゴキブリと滑空できないチャバネゴキブリは多くの共通点をもつが、クロゴキブリに対してチャバネゴキブリは、体重に対する翅の面積の割合は2倍なのに翅脈の本数が4/5で翅の形状を維持することができず、滑空には不向きである。