| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-69 (Poster presentation)
京都府立莵道高等学校(京都府宇治市)には「莵道の森」と呼ばれる学校林がある。林内はサクラ・コナラが優占する二次林とスギの人工林に分かれ、大雨による土砂崩れ跡は草原になっているなど、複数の植生が見られる里山林となっている。莵道高校では毎年、この学校林を舞台とした調査・研究をしており、これまでも植生調査、炭素含有量調査、土壌動物調査などを実施してきた。
本年は、二次林・人工林・草原の植生ごとにピットホールトラップ法で地上徘徊性動物を採集し、その多様性と季節変化を明らかにする研究を行った。仮説として、植生間の距離が近いため、出現種や多様性には変化が見られないのではないかと考えた。
調査は春期(5月)、夏期(7月)、秋期(10月)の計3回実施した。採集した地上徘徊性動物の種、個体数を記録し、そこから季節ごとの多様度指数H’およびJ’を求めた。また、DCAによる調査区の序列化を行った。
二次林と人工林では、多様度指数H’およびJ’が春から秋にかけて減少しており、似た季節変化をしていた。しかし、DCAの序列化では二次林と人工林は異なるパターンになっており、植生内の環境や種組成は異なっていることが分かった。季節ごとのパターンを見ると、夏に比べて春・秋はそれぞれ、どの植生もパターンが近くなっていた。ここから、気温の高くなる夏は、植生ごとの環境が大きく異なっていると考えられる。以上から、学校林に生息する地上徘徊性動物は、仮説で考えていた以上に、植生ごとに異なる多様性をもつことが分かった。
なお、二次林と人工林で、秋に多様度指数H’およびJ’が減少したことについては、秋期調査前の台風21号が影響している可能性がある。この台風により、二次林・人工林では多くの倒木など起こり、林内がかく乱されて多様度指数も減少したと考えられる。台風によるかく乱が生物多様性に影響を与えた事例として、非常に興味深い結果になった。