| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-70 (Poster presentation)
埼玉県には在来の淡水エビはヌカエビ、テナガエビ、スジエビの3種が存在している。しかし、2003年頃よりヌマエビ科2種の移入と繁殖が確認され、ヌカエビの生息域が急速に縮小している(埼玉県レッドデーターブック2018では準絶滅危惧に選定)。2015年より調査した本校近くの新河岸川をはじめ県内の9河川すべてに、移入種のカワリヌマエビ属が多数生息していた。この外来カワリヌマエビ属のmtDNAを解析したところ、中国・台湾・韓国から輸入した釣り餌用のミナミヌマエビ属の複数種であることがわかった。在来種ヌカエビと外来生物カワリヌマエビ属が混生している高麗川での2016年からの継続調査結果から、昨年は生息場所や繁殖力の違いを推測した。さらに、調査河川の上流域には在来ヌカエビの生息が多く見られ、下流域ではほぼ100%外来生物カワリヌマエビ属が生息し、その間の流域では混生している傾向があった。このことから、本年は外来生物カワリヌマエビ属が河川上流部へ遡上しているものと考え、移動性に関する実験を行った。外来と在来のエビをそれぞれ別の水槽に入れ、3秒に1回写真を撮影するカメラで10分間水槽を撮影し、エビの移動を観察した。条件設定は水草の有無、ポンプによる水流の有無とした。水流と水草があると、在来ヌカエビと外来カワリヌマエビ属はともによく移動した。水草があり止水にすると、在来ヌカエビは水草につかまり動かないのに対し、外来カワリヌマエビ属は水草にとどまることなくよく動いた。水流があり水草がなくなると、在来ヌカエビは飼育ケースの隅に動かずにとどまるが、外来カワリヌマエビ属はケース内を動いた。この実験より、在来ヌカエビに比べ外来カワリヌマエビ属は移動性が高いことがわかった。今後、外来カワリヌマエビ属がより上流部へ侵入し、在来ヌカエビを駆逐する恐れがある。さらに、外来と在来エビの生息数変化と生態を研究することで、在来エビの保全につなげたい。