| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム S01-3 (Presentation in Symposium)
土壌は陸域における主要な生態系プロセスである有機物分解を通して様々な生態系サービスの基盤を提供しているが、分解を駆動する土壌の生物多様性はその評価の難しさゆえ、かえりみられることが非常に少なかった。特に土壌動物群集に関しては、その多種共存機構について明らかになっていることは未だほとんどなく、約40年前に“enigma of soil animal species diversity(土壌動物種多様性の謎)”と呼ばれて以来、状況は変わっていない。形質(機能形質ともいう)とは、種の生態戦略や環境・他の生物への応答、生態系への影響に関係する形態的もしくは生理的な生物の特性を指す。種ではなく形質を単位として扱うことで、生物群集のプロセスや環境との関係、生態系機能への影響に一般則を導くことができ、その裏にあるメカニズムの推定につながることから、形質アプローチはここ20年ほどの間、大きく発展してきた。特に植物生態学での成果は目覚ましく、世界中の植物の形質値のばらつきを大きく説明する形質軸の整理や、環境への反応を表す形質(反応形質)と生態系プロセスへの機能を表す形質(効果形質)の分離等、データの蓄積や理論の展開が進められてきた。本発表ではこの形質アプローチを土壌動物学に適用する際の問題点を整理し、どのように適用すれば土壌動物群集の多様性維持機構、つまり群集集合の規則を解くことが可能になるかという点について、いくつかのアイディアを紹介する。