| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム S01-5 (Presentation in Symposium)
生物群集は、環境を規定する場所や時間によって、また構成種やその生態的特性によって大きく異なり、それら構成種間や環境との数多くの直接・間接的な相互作用により成立している。このような無数の要素と無数の相互作用を考えると、生物群種は超複雑でありその理解は一筋縄ではいかないという結論はきわめて妥当な帰結になるだろう。しかし、要素や作用数は数多くあったとしても、幸いなことに、生物群集を形成(組織化)する様々な過程はたった4つの枠組みに分類することができるという。その4つの枠組みとは、選択(selection)、ゆらぎ(drift)、分化(speciation)、分散(dispersal)である。このような視点に立つと、個々の生物群集は複雑かも知れないが、その形成にはなんらかのパターンや構造的な特徴があるのではという期待が生じる。また、これら4つの枠組みを個々の作用や構成種に当てはめていけば、生物群集のどのような要素が変化しやすいかを予測することが可能になるのではという期待も高まる。演者らは、東日本大震災以後に仙台湾に面している複数の干潟でマクロ底生動物群集のセンサス調査を行っている。本講演では、そのデータ利用しながら、上記4つの過程を適用することで見えてくる群集構造のパターンについて紹介するとともに、今後の生物群集研究における課題と方向性を議論したい。