| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム S05-5 (Presentation in Symposium)
ヒトの文明は、集団内でその知識や技術・技能を共有し、それらを継承し、さらに発展させることで生じてきた累積的文化進化の上で成立していると考えられている。一方で、このような累積的な知識の集積によって生じた文化的行動についてはヒト以外の動物では知られていない。その基礎となる文化行動の萌芽現象については、チンパンジーをはじめとしてニホンザルでも知られる現象であり、霊長類では従来重要な研究対象とされている。生態学的な解釈として、集団固有に生じる文化的行動は適応的であるとされることもおおい。しかし、行動の伝播をささえる心的メカニズムについては、観察学習などの社会学習が仮定され、模倣といった行動の正確な個体間再生産は鳴禽類の歌学習に一部見られるものの、模倣や積極的教育行動が成立することは霊長類ではない。伝播はその他の原理によって支えられ、集団固有行動が発現していると仮定される。本発表では、個体間の行動の相互作用現象そもののが引き起こす行動傾向について近年の研究を紹介し、集団行動が創発する過程について、最新の見解を紹介する共に、これらの知見を霊長類を始めたとした動物研究でどのように応用発展すべきかについての話題提供をしたい。