| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム S16-4 (Presentation in Symposium)
除去法は標識再捕獲法と並び、個体数及び捕獲効率の推定手法として広く普及している。除去法は捕獲を短期間に繰り返し行い、それに対する単位努力量当たり捕獲数(CPUE)およびその他密度指標の反応から捕獲効率を推測する手法である。個体のマークが不要であることから除去法は簡便な野生鳥獣の個体数低減の評価手法として有用である可能性があるが、標識再捕獲法に比べて除去法の研究は立ち遅れてきた。特に、周囲からの移出入がある状況はごくありふれているのにも関わらず、そのような系を想定した手法の研究はとても少ない。そこで本研究では、周囲からの移出入を考慮し、個体数、捕獲効率、移出入率を同時に推定する開放個体群除去法を開発した。本研究で開発した手法の前提条件は以下のとおりである。①捕獲は連続空間の一部に設定した一続きの範囲(捕獲実施区と呼ぶ)で実施される。②捕獲開始前の移出入は平衡状態にある。③外部からの平均移入速度は一定。④外部への移出速度は捕獲実施区内の個体数に比例する。⑤捕獲実施期間における自然死亡および繁殖による個体数増減は無視できるほど小さい。推定は逐次ベイズフィルタによる周辺尤度最大化法を用いた。複数のニホンジカ捕獲事業データに本モデルを適用したところ、実施期間中にCPUEの減少がみられたものについては個体数、捕獲効率、移出入率の同時推定が可能であったが、そうでないケースではパラメータは識別不能であった。このことは、捕獲による個体数の低減が明らかでない事業においては、その原因が捕獲圧の低さにあるのか外部からの移入にあるのかはCPUEの変化だけでは区別できないことを意味する。講演では、シミュレーションにより生成したデータによる推定精度を検証した結果についても発表する。