| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) E02-02 (Oral presentation)
水田は自然湿地の重要な代替生息地として、さまざまな生物種の貴重な生息地となってきた。しかし、近年の農地開発や都市開発等の景観開発の影響により、水田に生息する多くの生物種が生息地の分断化の脅威にさらされている。こうした分断化景観において生物種を長期的に保全するためには、生息地間で個体の移出入を維持・促進させることが重要となるが、水田景観における本テーマの知見は限られている。
そこで本研究では、絶滅危惧ⅠB類に分類されており、水田とため池を主な生息地とする佐渡島固有種サドガエル(Glandirana susurra)に着目し、サドガエル集団間の連結性を明らかにして今後の保全計画への指針を示すことを目的とした。そのために本研究では、佐渡島中央部地域(国中平野を含む水田景観)において各集団間の連結性(遺伝子流動)の推定、および連結性に関与する景観要因の推定を行なった。具体的には、ベイズ法で推定したサドガエル集団の移入率を使って、集団間で個体の移入・移出がどの程度起こっているのかを明らかにするとともに、移入率を応答変数とした線形モデル解析を基に、集団間の連結性に関与する景観要因を明らかにした。解析の結果、(1)サドガエル集団間で最近の遺伝子流動はほとんど起こっていないこと、(2)集団間の遺伝子流動は同じ水系に属する集団間で大きいこと、(3)集団間の遺伝子流動は直線距離が近い集団間で大きいこと等が明らかとなった。これらの結果から、水田景観が広がりサドガエルが移動しやすいと考えられる佐渡島中央部地域においても、本種の生息地は分断化・孤立化の影響を受けている可能性が示唆された。また、今後、佐渡島中央部において本種を保全する際には水系や景観の違いに配慮し、河川周辺の湿潤な環境を保全することが望ましいことも示唆された。