| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


自由集会 W21-2  (Workshop)

全国規模で分布するスズタケの一斉開花の地理的変遷と開花特性【O】
Geographical changes and characteristics in gregarious flowering of a dwarf bamboo species, Sasa borealis【O】

*齋藤智之(森林総研東北), 岡本透(森林総研関西), 星野大介(森林総研)
*Tomoyuki SAITOH(Tohoku FFPRI), Toru OKAMOTO(FFPRI Kansai), Daisuke HOSHINO(FFPRI)

スズタケは太平洋側に偏っているが全国に分布するササ類の一種である。この半世紀我々が直面し調査してきたタケササ類の中で、本種は初めて一連で全国的に一斉開花したササ種となった。一斉開花は全国で一気に起きておらず、最初の地域の開花から現時点まで実に20年にわたって地理的変遷がみられた。現在もなお一連の開花現象は終わっておらず、今後も開花すると予想されている未開花の地域が残っている。ササ類の繁殖生態を考える上で、各ササ種がどのような分布をしていて、どのような地域で一斉開花が起こったかということは重要な調査項目の一つと考えられる。これまで詳細に調査されためぼしいササ類では、チシマザサ、チマキザサ、イブキザサ、チュウゴクザサ、ミクラザサなどがあるが、いずれも全国的に分布していないか、全国的な開花に発展していない。開花エリアの特定は種の分布が広域に渡ると、大変なマンパワーを要する。したがって、これまで一斉開花を起こしてきた種であっても開花地の100%を明らかにできている事例は少ない。初めて全国的な規模で開花したスズタケに関しても努力はしているが、大雑把な開花の地理的変遷でしか明らかにできていないのが現状である。
 繁殖生態でもう一つ重要なのはその地域における開花結実特性であろう。全国規模で何年にも渡って一斉開花した場合、各年の各地域で一つの一斉開花地が生じる。本来ならばその開花地の全てで細かい開花特性から更新過程に至るまで調査するべきなのだろうが、マンパワーの点で不可能に近い。スズタケの事例では、2017年の中部地方の一斉開花は、ほぼ全域で一気に開花した。全国の分布の中でも特徴的な開花だったのではないかと考えている。本集会では、愛知県設楽町の段戸国有林内での開花特性を紹介しながら、一斉開花研究の現在地を議論したい。


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