| 要旨トップ | ESJ72 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S02  3月16日 9:00-12:00 Room A

移動分散と空間分布の不均一性がもたらす進化的・生態学的波及効果【B】【O】
The evolutionary and ecological impacts of bias in dispersal and spatial distribution【B】【O】

大崎晴菜(東京都立大学), 勝原光希(岡山大学)
Haruna OHSAKI(Tokyo Metropolitan Univ.), Koki KATSUHARA(Okayama Univ.)

例えば、地面に落ちたどんぐりを集めるとき、ある場所では一度にたくさん見つかるのに、少し移動すると全く見つからない場所に出くわすことがある。同じ森の中、歩いて回れる狭い範囲であっても、どんぐりの落ちる位置は一様ではない。こうしたまばらな広がりは、様々な生物で普遍的に見られる。多くの場合、これらの空間的な不均一性は、環境の異質性や移動分散におけるランダム性の“帰結”として解釈される。一方で、私たちが生物の進化機構や群集形成機構を調べようとするとき、ハビタット内における生物の移動の頻度や個体群密度は考慮したとしても、移動分散の偏りや局所的な密度のばらつきにまで考えをめぐらせることは多くない。こうした生物の移動分散や空間分布の不均一性を“起点”と考えたとき、生態系にはどのような影響が浮かび上がってくるだろうか?
本シンポジウムでは、生物の移動分散と空間分布における不均一性の進化的・生態学的意義を再評価し、その波及的効果について検討する。各演題では、理論的視点と実証的研究の両面から、非常に多岐にわたる様々な分類群・アプローチに基づいた話題を提供し、多角的な議論を展開する。シンポジウムの締めくくりには、演者らと聴衆によるパネルディスカッションを行い、これからの空間生態学研究における新たな方向性の探求を目指す。

[S02-1]
種子散布方向の偏りが気候変動下の植物の分布変化に及ぼす影響 *直江将司(森林総研)
Effects of bias in seed dispersal direction on plant distribution changes under climate change *Shoji NAOE(FFPRI)

[S02-2]
河川性魚類における表現型依存的な流下による進化圧 *山田寛之(学振PD, 愛媛大学)
Evolutionary pressure due to phenotype-dependent downstream dispersal in riverine fishes. *Hiroyuki YAMADA(JSPS Research Fellow PD, Ehime Univ.)

[S02-3]
”歪んだ”移動分散がメタ群集での多種共存を促進する 篠原直登(京都大学), *勝原光希(岡山大学)
Anisotropic dispersal promotes species coexistence in a metacommunity. Naoto SHINOHARA(Kyoto Univ.), *Koki KATSUHARA(Okayama Univ.)

[S02-4]
混ざると光る個性:他種との空間的な混在度が花色を差別化する利益におよぼす影響 *高木健太郎, 大橋一晴(筑波大学)
Effect of spatial species mixing on the benefits of having distinct flower colour from co-flowering species *Kentaro TAKAGI, Kazuharu OHASHI(Tsukuba Univ.)

[S02-5]
宿主植物個体群の不均一な空間分布が引き起こす植食者の空間的凝集 *大崎晴菜(東京都立大学), 山尾僚(京都大学), 立木佑弥(東京都立大学)
Spatial heterogeneity of host plant populations induces the aggregation of herbivores. *Haruna OHSAKI(Tokyo Metropolitan Univ.), Akira YAMAWO(Kyoto Univ.), Yuuya TACHIKI(Tokyo Metropolitan Univ.)

[S02-6]
宿主メタ個体群の移動性や生産性の不均一性により、病原体の毒性は必ず増加する *佐々木顕(総研大, 進化センター), 佐藤正都(産総研), Ulf DIECKMANN(OIST)
Metapopulation heterogeneities in host mobility and productivity always increase virulence and infectiousness *Akira SASAKI(SOKENDAI, RCEIS), Masato SATO(AIST), Ulf DIECKMANN(OIST)


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