| 要旨トップ | ESJ72 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
シンポジウム S06 3月17日 9:00-12:00 Room S
全国各地でシカの個体数が増加し、シカの過採食による植生衰退、さらに森林・草原・湿原・高山・河川生態系や様々な生物群集への影響が多数報告されている。環境省はシカの個体数半減という目標をかかげており、地域によってはシカの個体数が減少に転じ、植生に変化のきざしが見えている地域もある。しかし、シカの生息域は拡大しており、それにともないシカの影響がおよんでいる地域が拡大し、生態学の教育・研究が行われてきたサイトも影響をうけるようになってきている。加えて、長期間シカの過採食を経験している地域や脆弱な生態系では、シカ個体数が減少しても植生が消失したまま変化せず、生物種の地域絶滅や生態系劣化が進行し、不可逆的変化やレジームシフトが議論されるようになってきている。限られた予算・人的資源のもと、また気候変動の影響も受けている生態系において、どのように生態系・生物群集への影響を食い止め、生態系を「回復」させることができるのか。そもそも「回復」とは具体的に何を意味するのか。生態学をはじめとするアカデミアに今求められていることは何なのか。本シンポジウムでは、研究分野や学問領域を超えて、知見を統合・共有し、シカ食害から生態系を「回復」させるために学術界としてすべきことをみなさんと議論したい。まず、植生の回復・生態系保全・生物多様性保全などの異なる管理目標のもとで、保全と研究が進められてきた兵庫県・丹沢山地・芦生の例を通じ、進展と課題を紹介頂く。次に、個別研究から一般化に繋げるために必要な生態学理論、実務における現状と今後の展望を紹介頂く。生態学者の皆様に参加いただき、その知識や経験を総動員して、既存知見の統合研究や理論的フレームワーク、研究ネットワーク化など、分野横断的な今後の取り組みに繋げることを目指す。
コメンテーター:明石信廣(道総研林試)
[S06-1]
趣旨説明:九州のブナ林で起こっていることを例に
The objectives of this symposium: From the examples of forest degradation induced by deer in beech forests of Kyushu
[S06-2]
兵庫県における森林生態系保全のためのシカ対策―科学的管理の進展と課題
Deer management for forest ecosystem conservation in Hyogo Prefecture: Progress and challenges in scientific management
[S06-3]
丹沢山地の20年以上にわたる自然植生回復のためのシカ対策―成果と課題
Deer management for natural vegetation recovery over 20 years in the Tanzawa Mountains: Achievements and challenges
[S06-4]
芦生研究林における生物多様性保全にむけた保全研究とその課題
Research and future challenges for the conservation of biodiversity in the Ashiu Forest Research Station
[S06-5]
シカの増加に伴う森林の劣化と回復可能性:その理論と実際
Deer-induced forest degradation and its recovery potential: Theory and practice
[S06-6]
シカ管理体制の現状と今後の展望
The current state and future prospects of deer management