| 要旨トップ | ESJ72 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
シンポジウム S09 3月17日 9:00-12:00 Room F
エネルギー地形解析は、対象とする系の安定性の大域的な理解を可能にする。この手法は、従来の微分方程式によるモデリングと比べると、より多くの種を含む系に適用でき、時系列のみならずスナップショットデータも利用できる。このような特徴から、大規模データと数理アプローチを軸とする生態学のこれからの発展において、重要な役割を果たすことが期待される。エネルギー地形解析は、確率構造の記述に使われる数理モデルに基づく手法であり、そのモデルはマルコフ確率場、イジングスピングラス、ホップフィールドネットワークといった異なる名称で数理科学の様々な分野で用いられてきた。生態学では、現在のエネルギー地形解析を構成する手法の一部が分布予測や種間関係の推定などデータ解析的な目的に利用されることがあったものの、モデル化された生物群集が表す状態空間を系統的に理解するための方法が無く、その意義は十分に検討されていなかった。この点に突破口を与えたのが脳科学分野で提案された「エネルギー地形解析(energy landscape analysis)」であった。現在、エネルギー地形解析は生態学や脳科学にとどまらず様々な分野で応用され、新しい知見をもたらしつつある。一方で、そうした試みのなかで、技術的な課題や概念的な整理の重要性も明らかになっている。本シンポジウムでは、エネルギー地形解析の活用を最先端で進める研究者や、手法上の発展に関わる研究者にその取り組みを紹介していただくことで、生態学におけるエネルギー地形解析の活用がさらに広がり、その発展により多くの研究者が関わるきっかけになればと考えている。
[S09-1]
エネルギー地形解析の入口
An introduction to Energy Landscape Analysis
[S09-2]
実データに基づく安定性地形の推定からキーストーン種を特定する
Identifying keystone species based on data-driven approaches for inferring stability landscapes
[S09-3]
エネルギー的な不安定性にもとづいた生物多様性変化の予測
Energetic instability predicts temporal biodiversity change
[S09-4]
エネルギーランドスケープ法と擬似時間再構成法を組み合わせたレジームシフトの検出
Detection of regime shift via a combination of energy landscape and trajectory inference methods
[S09-5]
群集集合モデルとエネルギー地形解析を用いた種間相互作用と群集動態の理論解析
Theoretical analyses on species interactions and community dynamics using the community assembly model and energy landscape analysis.
[S09-6]
エネルギー地形解析から読み解く微生物代謝相互作用ネットワークの安定性
Unraveling stability in microbial metabolic interaction networks as deciphered by energy landscape analysis