| 要旨トップ | ESJ72 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S14  3月18日 9:00-12:00 Room A

火星の生態学 -火星から地球生態系を考える【O】
Mars Ecology - Can Earth organisms expand into space?【O】

久米篤(九州大学)
ATSUSHI KUME(Kyushu University)

1961年に始まったアポロ計画以来60年ぶり、人類史上2度目の有人月面着陸計画、Artemis計画が進められており、日本も2020年代後半に米国に次ぐ2カ国目の有人月面着陸を果たす目標を掲げている。人類は今、月面およびその先にある火星も含めた宇宙居住の実現を目指しており、持続的な宇宙生活を実現するため地球の他の生物の力を借り、月や火星での宇宙農業や地球惑星化(テラフォーミング)を実現し、その場での循環型生活を構築しようとしている。E.P. Odum「生態学の基礎」(1971)でも、閉鎖生態系の議論において宇宙船が利用され、宇宙旅行の生態学の章も設けられているが、具体的な実用化技術はまだ無い。
 宇宙の生態学には、閉鎖生態系生命維持システム(CELSS)の開発、地球惑星化を目指した生態工学的な技術開発、そして地球生態系とそれを構成する生物の特徴を地球外からの視点で再認識するという観点がある。
 地球と宇宙・惑星環境では、大気・温度環境に加えて、重力、紫外線、宇宙線、放射強度やその変動周期などの物理環境が大きく異なる。重力や放射環境の違いによって植物の生育にはどのような影響がでてくるのであろうか? 火星で植物が定着するための基質(レゴリス)は地球のような風化は進んでおらず、土壌化は重要な課題であり、過去の地球における植物の陸上進出を理解する上でも重要である。さらに、地球生物が地球外に持ち込まれることによって生物汚染が生じる可能性もある。「たんぽぽ計画」の成果は、パンスペルミア仮説や、生命および生命の源が惑星間を移動する可能性が否定できないということを示しており、惑星保護や汚染管理は重要な取り組み課題となる。
 本シンポジウムでは、地球と少し違った惑星環境にある火星の生態学を考えることで、地球生態系のより深い理解を行うことを目的としている。
(コメンテータ 地球の生態学者代表、隅田 明洋博士)

[S14-1]
地球生態系の成立条件を火星環境から見直す *久米篤(九州大学)
Reconsidering the conditions for the formation of Earth's ecosystem from the perspective of the Mars environment *Atsushi KUME(Kyushu University)

[S14-2]
コケ宇宙実験(ISS与圧部、曝露部)から火星テラフォーミングを考える *藤田知道(北海道大学理学部)
Plan for Mars terraforming from moss space experiments (ISS pressurized and exposed sections) *Tomomichi FUJITA(Hokkaido Univ., Fac. Science)

[S14-3]
重力が植物の機械的性質に及ぼす影響 -コケ宇宙実験を通して見えてきたこと- *蒲池浩之(富山大学)
Influence of gravity on mechanical properties of plants -Some Insights from Space Moss Experiments- *Hiroyuki KAMACHI(Univ. Toyama)

[S14-4]
宇宙環境に対するコケ植物の光合成応答-過重力・ISS実験の結果から- *半場祐子(京都工芸繊維大学), 竹村香里(京都工芸繊維大学), 北島佐紀人(京都工芸繊維大学), ドゥティ フン(北海道大学), 高田海悠(北海道大学), Alisa VYACHESLAVOVA(Hokkaido Univ.), Marcel Pascal BEIER(Hokkaido Univ.), 横井真希(北海道大学), 篠澤章久(東京農業大学), 前田彩友子(京都工芸繊維大学), 安井祐太郎(京都工芸繊維大学), 尾﨑亮太(京都工芸繊維大学), 奥川颯馬(京都工芸繊維大学), 蒲池浩之(富山大学), 久米篤(九州大学), 唐原一郎(富山大学), 坂田洋一(東京農業大学), 小野田雄介(京都大学), 藤田知道(北海道大学)
Photosynthetic response of bryophytes to the space environment -Results of hypergravity and ISS experiments- *Yuko T HANBA(Kyoto Inst. Tech.), Kaori TAKEMURA(Kyoto Inst. Tech.), Sakihito KITAJIMA(Kyoto Inst. Tech.), Huong Thi DO(Hokkaido Univ.), Miyu TAKATA(Hokkaido Univ.), Alisa VYACHESLAVOVA(Hokkaido Univ.), Marcel Pascal BEIER(Hokkaido Univ.), Maki YOKOI(Hokkaido Univ.), Akihisa SHINOZAWA(Tokyo Univ. Agric.), Ayuko MAEDA(Kyoto Inst. Tech.), Yuichiro YASUI(Kyoto Inst. Tech.), Ryota OZAKI(Kyoto Inst. Tech.), Shoma OKUGAWA(Kyoto Inst. Tech.), Hiroyuki KAMACHI(Univ. Toyama), Atsushi KUME(Kyushu Univ.), Ichirou KARAHARA(Univ. Toyama), Yoichi SAKATA(Tokyo Univ. Agric.), Yusuke ONODA(Kyoto Univ.), Tomomichi FUJITA(Hokkaido Univ.)

[S14-5]
火星で土を作るには? 岩石の初期土壌生成過程に学ぶ *藤井一至(森林総合研究所)
How to create soil on Mars -lessons from initial soil formation on earth- *Kazumichi FUJII(FFPRI)

[S14-6]
火星着陸探査に向けた惑星保護・惑星検疫活動の取り組みの現状 *木村駿太(JAXA宇宙研)
Activities of planetary protection for future Mars landing mission of Japan *Shunta KIMURA(ISAS/JAXA)


日本生態学会