| 要旨トップ | ESJ72 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
自由集会 W16 3月17日 18:00-19:30 Room A
生物の生存に関わる行動や戦略(摂餌、繁殖や捕食回避)は、環境適応の過程で進化してきたものである。一方で、それらはさまざまな制約(遺伝相関や系統発生的制約、集団遺伝学的制約、形質間のトレードオフなど)のもとで形成されているものでもある。このような制約は特定の形質を進化しにくくしたり、進化を停滞させることもある。つまり、進化とは単に最適解を目指す過程ではなく、制約された範囲内での最適化を模索する過程として捉えることができる。「制約」の観点から生物の行動や適応戦略を理解することは、なぜ一部の生物が長期にわたり特定の形質やニッチを保持しているのか、また、なぜ進化の方向性が特定のパターンに限定されるのかといった問題を考えるうえで新たな視点を提供する。本集会では、生態的動態や動物の振る舞いに影響を与える系統的制約やトレードオフ、集団遺伝学的制約に焦点を当てながら、制約がいかに適応進化を妨げるのか、生物はそのような制約をいかに緩和し、克服しているのかについて、複数の生物種の事例を紹介する。生物の生態的多様性とそれに対する進化的制約の関係性に迫り、制約が進化に与える影響や生物の適応的柔軟性について議論したい。
企画者:遠藤千晴(京都大学)・高橋佑磨(千葉大学)
はじめに)遠藤千晴:「制約」からみた生物のふるまい?
講演1)奥山登啓ら:集合化と異質性による採餌-警戒トレードオフの克服
講演2)遠藤千晴:ニッチの保守性下におけるジェネラリゼーションと適応戦略の多様化
講演3)安井行雄:bet-hedging(両賭け)は適応度の平均値と分散のトレードオフを緩和する
おわりに)高橋佑磨:生態的動態に影響しそうなさまざまな制約
[W16-1]
集合化と異質性による採餌-警戒トレードオフの克服
Aggregation and heterogeneity mitigate foraging–vigilance trade-off
[W16-2]
ニッチの保守性下におけるジェネラリゼーションと適応戦略の多様化
Adaptive strategies through generalization under niche conservatism
[W16-3]
bet-hedging(両賭け)は適応度の平均値と分散のトレードオフを緩和する
Bet-hedging mitigates the mean-variance trade-off of fitness