| 要旨トップ | ESJ72 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
自由集会 W18 3月17日 18:00-19:30 Room E
多種多様な生物種から構成される生物群集のとる状態(組成、動態)には、潜在的に無限の可能性が考えられるにもかかわらず、実際にはむしろそれぞれの系に特徴的な比較的少数のパターン、すなわち安定な状態(と不安定な状態)が存在することがわかってきている。この事実は、生物群集の状態は決して「何でもあり」ではなく、何らかの要因によって制限・支配されていることを示唆する。こうした生物群集の安定性にまつわる議論を背景として、群集生態学では古くから生物群集全般の状態を制限・支配する要因の探索が行われてきた。しかし、Vellendが指摘したように要因は膨大に考えられるうえ、それぞれの系に特異的であることから、未だ探索の途上である。
本自由集会では、種間相互作用ネットワークの制約因子および特徴因子に着目し、支配要因の解明の糸口を見出したい。制約因子としては、代謝(エネルギー)に着目した研究を紹介する。いかなる生物も代謝によるエネルギー獲得が不可欠であることから、代謝は系に依らない普遍的な制約因子である可能性がある。また、特徴因子としては、ネットワーク特徴量(種数やコネクタンス)に着目した研究を紹介する。近年の理論の発展により、相互作用する多種系の構造安定性を解析的に扱うことが可能となり、相利共生ネットワークの生態学的レジリエンスとネットワーク特徴量の関係の理解が進んだ。ネットワーク特徴量も系に依らず適用できる特徴因子であると期待される。
本集会では、いずれも多種系を対象として研究を進める3人の大学院生に加え、奈良女子大学の瀬戸氏を迎えて、観察的アプローチ・理論的アプローチの両側から生物群集の支配要因について議論する。
[W18-1]
細菌群集に現れる種組成パターンと安定性
Species composition patterns and stability in bacterial communities
[W18-2]
生態学的レジリエンスから見た相利共生系の種数比率
Species number ratio of mutualistic systems in terms of ecological resilience
[W18-3]
エネルギー代謝に基づく微⽣物進化とダイナミクスモデリング
Microbial evolution and dynamics modeling based on energy metabolism
[W18-4]
微生物ネットワークを決める因子とは何か?: 化学反応系の観点からの洞察
What determines microbial networks?: Insights into community stability from the perspective of chemical reaction systems