| 要旨トップ | ESJ72 自由集会 一覧 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


自由集会 W23  3月18日 14:00-15:30 Room F

動物行動学×動物生理学から考える保全生態学の次なる展開【O】
Advancing conservation ecology by integrating animal behavior and animal physiology【O】

内田健太(東京大学), 酒井理(東京農工大学), 嶌本樹(日本獣医生命科学大学)
Kenta UCHIDA(The University of Tokyo), Osamu SAKAI(Tokyo University of Agriculture and Technology), Tatsuki SHIMAMOTO(Nippon Veterinary and Life Science University)

人間活動が生物にもたらす影響を多面的に評価することは、生態系の保全・管理において欠かせない。これまで保全生態学では、生物の種数や個体数、遺伝的多様性に着目した研究が盛んにおこなわれてきた。その一方で、これらのパターンを形作る重要な要素である、『動物行動』や『動物生理』の視点は、未だ十分に考慮されてきたとは言い難い。人為的な環境攪乱は、生物の様々な行動の改変を通じて、個体群や生態系スケールへの広範な影響をもたらすことが分かっている。そして、生物の繁殖や健康と深く関わる生理メカニズムもまた、人間活動の影響を受けやすく、潜在的に生物の数や分布に影響する。効果的に生物多様性保全・野生動物管理を行うためには、動物行動学や生理学の視点を上手に活用していくことも重要ではないだろうか。
 例えば、生物の人間活動への応答は均一ではないため、希少種保全や害獣管理の場面では行動の個体差(animal personality)を考慮することが必要である。また、ストレスや繁殖ホルモンの測定は、人間活動の影響をいち早く検出できる強力なツールかもしれない。さらに、行動と生理は密接に相互作用するため、両分野を統合させることで人間活動の影響をより正確に評価でき、効果的な保全管理戦略の提言が可能となるかもしれない。
 本集会では、動物行動学と動物生理学の統合による、保全生態学の新たな展開の可能性について探りたい。実際に、保全や管理への応用を目指して、動物行動・動物生理に関する研究を進めている演者に話題を提供してもらい、コメンテーターや会場を交えて議論したい。

[W23-1]
ニホンザルに見られた農地での採食行動の個体差:性、母性、個性の影響 *三谷友翼(岩手連大)
Individual differences in foraging behavior of Japanese macaques in farmland: Influences of sex, maternity and personality *Yusuke MITANI(Iwate University)

[W23-2]
野生ユキヒョウの行動を生理学的視点から評価し保全に活かす試み *木下こづえ(京都大学)
The challenge of evaluating the behavior of wild snow leopards from physiological perspective for conservation *Kodzue KINOSHITA(Kyoto Univ.)

[W23-3]
音で行動を制御する:外来種グリーンアノールにおける試み *酒井理(東京農工大学)
Controlling behavior by acoustic repellents: an attempt in the invasive green anole *Osamu SAKAI(TUAT)


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