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一般講演 P1-073

ダム下流における河床付着膜の特徴と支川合流の影響

*皆川朋子(土木研究所・自然共生研究センター),片野 泉(同),萱場祐一(同),河口洋一(九州大学・工)

ダム下流の環境改善の具体的なシナリオを作成していくための定量的知見は十分ではない.本研究では,ダム下流の河床付着膜の量的・質的特徴を明らかにするため,複数のダムにおいて調査を行った.また,特に支川合流の影響及び環境要因との関係を明らかにするため,木曽川水系阿木川ダムを対象に,ダム上流,下流,これに合流する最初の支川及び支川合流後の4区間に調査区を設け,付着藻類,底生動物及び環境調査を2005年3月,8月に行った.

ダムにより流況が平滑化されている時期の河床付着膜の特徴として,藻類現存量,藻類以外の有機物や無機物量が高い傾向があり,付着藻類群落は多くの種から構成され,垂直方向に伸長するタイプの種が多い構造であることなどがあげられた.阿木川ダムを対象とした調査からは,安定した流況下にあった3月のダム下流の藻類現存量は,ダム上流や支川より高く,藻類群落も異なったが,支川合流後は,現存量は支川と同程度で,藻類群集は,ダム下流と支川の中間的な構造であることが明らかになった.ただし,3月よりも流量が高く,変動をもった流況下にあった8月は,3月にみられたような調査区間の違いは認められなかった.また,3月調査を対象に,付着藻類現存量に与える環境要因について分析した結果,ダム下流の高い付着藻類現存量は,流速の低下,粗粒化等の要因のみでなく,粗粒化の影響によりヤマトビケラ属の個体数が低く,摂食圧が低く抑えられたことが関与していること,支川合流後は,それらの物理量が支川とほぼ同程度に回復するととともに,ヤマトビケラ属の個体数(摂食圧)が増加することによって,現存量は支川と同程度まで低下すること等を推察した.

今後,さらに条件の異なる様々な事例について調査し,知見を蓄積していく必要がある.

日本生態学会