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一般講演 P2-080

林床土壌ブロックから発芽した先駆木本樹種の実生の動態:外挿すると見えること

*竹中明夫(国立環境研), 矢原徹一(九州大)

九州大学新キャンパス(伊都キャンパス)では,造成にともない皆伐された照葉樹林の林床土壌のブロック多数を造成地に配置し,植生を回復をはかっている.各ブロックの面積は1.2メートル四方である.多くのブロックでは配置後に発芽した木本樹種の芽生えが数多く見られる.その大部分はカラスザンショウ,アカメガシワ,ヌルデ,クサギ,ネムノキの5種で,これらはいずれも先駆木本樹種である.これらの樹種それぞれの実生個体群の動態を3年間にわたって追跡した.

約90の土壌ブロックに1年めに出現して定着した実生の数は,種間で大きく異なっており,カラスザンショウが群を抜いて多く,ついでアカメガシワが多く見られた.ブロックごとの実生数をそれぞれの種で見るとほぼポアソン分布に近かった.また出現数の種間での相関は低かった.これは,少なくともブロックのサイズで見る限り,樹種間に得意環境が異なるといったニッチ分割の証拠はないことを意味する.

年間の死亡確率は高さに依存し,大きな個体ほど生き残りやすかった.死亡の高さ依存性パラメータは,種間で顕著に異なっていた.死亡率が種個体群密度に依存するといった現象は見られず,とくに少数者の利益を示唆するような結果は得られなかった.

各樹種の実生定着,成長,死亡のプロセスを統計モデルで表現し,そのまま外挿して将来の生き残り個体数を予測した.さらに,生き残り個体数が次世代の実生数に反映するとして,長期的な予測を試みた.少数者の利益がないため,当然ながら世代を重ねるとともに種数は減少していった.

日本生態学会