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ESJ56 一般講演(口頭発表) E1-03

刈取り時期の違いが阿蘇地域における半自然草原の植生に及ぼす効果

小路 敦(九州沖縄農業研究センター 現在:北海道農業研究センター)


【はじめに】かつて国土面積の1割以上を占めていた半自然草原であるが、現在でもまとまった面積で本来の半自然草原が残存する阿蘇地域においても、畜産をとりまく社会経済状況の変化から草原維持が困難となってきており、保全と再生に向けた様々な取り組みが行われている。演者は、このような取組に対して効率的な草原管理法を提示すべく、環境省「阿蘇草原再生実証波野試験地」の3サイトにおいて、4年間にわたり植生を調査し、刈取り時期の違いの効果を検討した(各サイト2反復の計6反復)。

【調査地および方法】他の地域と比較して草地改良が行われておらず、阿蘇地域においても旧来のままの姿の半自然草原が比較的多く残されており、出現種数や希少植物にも富む阿蘇草原再生波野実証試験地において、7月刈り(JC)、9月刈り(SC)、7・9月刈り(JSC)、隔年9月刈り(BSC)、火入れのみ(F)、放棄(A)の各処理が出現種数や各種群の優占度等に及ぼす効果を、分散分析により検討した。

【結果および考察】一元分散分析の結果、群落高、植被率、イネ科植物・広葉草本・帰化植物の優占度に対する処理の有意な効果が認められた。また、出現種数はサイト間差が大きく、一元分散分析では5%水準の有意差は認められなかった(p=0.063でJSC、SC、BSC、JC、F、Aの順)が、二元分散分析の結果、処理およびサイトの有意な効果が認められた。帰化植物の優占度はJSC、JC、SC、BSC、F、Aの順となり、JSCでは他の全処理区と比較して有意に高く、JCではBSC以下の処理区と比較して有意に高くなった(Tukey's HSD)。SC以下の処理区間には有意差は認められなかった。

以上の結果から、帰化植物の侵入を抑制しつつ、出現種数を高く維持するためには、9月刈りあるいは伝統的な利用法である隔年9月刈りが効果的であると考えられた。


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