ESJ56 一般講演(口頭発表) E2-02
*南谷幸雄(愛媛大・院・連合農), 福田達哉(高知大・農)
環状型分布を示す種は、二次的接触域で交雑せず、分布拡大過程で種分化が起こっていると考えられる種が存在する。西日本に広く分布するシーボルトミミズは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)を用いた系統解析により、四国東部もしくは紀伊半島を起源とし、中国地方を経て九州に侵入した系統群が、再び四国西部に分布拡大したことを明らかにし、また四国東部と西部で異なる2系統群が存在していることも明らかとなった。この分布拡大形式から、本種が環状種である可能性が示唆された。そこで、本研究では核DNAを用いて異なる系統群の分布が接する地域における交雑の有無を検討し、シーボルトミミズの分化様式を明らかにする目的で研究を行った。
本研究は2006〜2008年に紀伊半島、四国、中国地方、九州の計63地点69個体のシーボルトミミズの冷凍サンプルを用いた。これらの標本から全DNAを抽出し、PCR法を用いてmtDNAのCOI領域および核DNAのITS領域を増幅後、シーケンサーを用いてそれぞれ690bp、1094bpの塩基配列を決定し、COI領域については最節約法・近隣結合法・最尤法を、ITS領域についてはネットワーク法を作成した。
ITS領域の解析により、シーボルトミミズは単系統群を形成し、種内に大きく4つの系統群が認められた。紀伊半島の系統群、及び阿讃山地の系統群はmtDNAの解析による系統群と一致した。四国東部と西部には2系統群が存在していたが、その境界はmtDNAのものとは一致せず、四国中央部で広い交雑帯を形成していることが明らかになった。このためシーボルトミミズは環状的に分布拡大してきたものの、二次的接触域で生殖的隔離は生じておらず、網状的な分化を遂げていることが明らかとなった。