ESJ56 一般講演(口頭発表) E2-06
*小林美苑(奈良女大・人間文化),高橋智(奈良女大・人間文化),堀道雄(京都大・理)
ハクセンシオマネキUca lacteaは熱帯、温帯地域の海岸の河口付近に生息している。雄は、左右どちらか一方に大きなハサミを持っているが、雌はこのような大きなハサミをもっていない。雄の左右比は1:1でる。堀らは、1992年に和歌浦と男里川の2カ所のハクセンシオマネキの左利きと右利き個体の入れ替え、和歌浦での雄の個体はほぼ左利き個体、男里川の雄の個体はほぼ右利き個体とした。和歌浦の定着稚ガニの左利き個体の比率は入れ替え後1年目は、0.5に近いが5年目まで徐々に増加して0.5からズレる。5年目から6年目の間で左利き個体の比率が0.5付近まで減少する。入れ替え後1年目以降の定着稚ガニの左利き個体の比率が0.5からズレていくとから、左右性は遺伝子で決まることが分かる。また、1年目の比率が0.5であることから、息子の左右性は母親の遺伝子によって決まると考えられる。本研究では、雄のハクセンシオマネキの遺伝システムについて母親の遺伝子によって息子の左右性が決まるモデルとして、左右性を決める遺伝子がX染色体上にあるとするモデルと常染色体上にありインプリンティングが働いているとするモデル、及び常染色体上にあり母性効果が働いているとするモデルを考えた。どのモデルでもハクセンシオマネキの入れ替え後の個体群動態を説明できた。入れ替え後の5年目から6年目にかけての定着稚ガニの左利き個体の比率の減少を説明するためには外部からの定着稚ガニの移入が必要であることが分かった。また、多数派が不利になる頻度依存の影響についても調べる。