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ESJ56 一般講演(口頭発表) F2-01

栗駒山山地帯上部の泥炭層で発見された大量の完全なブナ葉片−最終氷期にも山地帯にブナ林が存在していたのか?−

*若松伸彦(東京農大・地域環境), 池田重人,岡本透(森林総研)


奥羽山脈栗駒山はオオシラビソなどの亜高山性針葉樹種の分布域が極めて狭く、偽高山帯景観が広くみられる。このような偽高山帯景観がみられる原因として、過去の気候変化に伴う植生変化の関与が挙げられる。栗駒山北面の山地帯上部にあたる標高1050m付近の「泥炭地湿原」では、1万年以上前からの泥炭の堆積が報告されている(鈴木・菊池,1973)。この「泥炭地湿原」において堆積している泥炭内から植物遺体を検出することにより、最終氷期の同地域の植生を復元することは、同地域の植生の成り立ちを明らかにする上で重要なヒントとなるであろう。そこで発表者らは「泥炭地湿原」の泥炭層内から、植物の大型遺体検出を試みた。

「泥炭地湿原」の泥炭は、主に強酸性水中に生育するウカミカマゴケ由来であり、繊維質の泥炭が4.0m以上の厚さで堆積していた。このウカミカマゴケ泥炭内、地表面から約2.5m〜4.0mの層内において、極めて保存状態が良好な植物遺体が大量に発見された。その多くはブナの葉片であり、葉の大きさにバラつきがみられた。またブナ以外の種としては、アカミノイヌツゲ、ウラシマツツジ、ダケカンバ、ミヤマナラ(ミズナラ)、イネ科草本、幅の広いササの葉片が多くみられた。その一方で、針葉樹種の痕跡は全くみつからず、現在湿原周辺に多くみられる植物種のみであった。地表面から2.5m〜3.6mの泥炭内のブナ葉片4点を放射性炭素同位体による年代測定をおこなった結果、3,600〜4,140yrBPであった。


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