ESJ56 一般講演(口頭発表) G1-06
*小林草平,赤松史一,中西哲,尾嶋百合香,中田和義,天野邦彦(土木研究所)
河川において食物網の基礎エネルギーは上下流の流程によって大きく異なると考えられる。河川連続体仮説では、陸生有機物が基礎の上流から、河川内有機物(河床礫付着藻類等)が基礎の中流、さらに上流からの流下有機物が基礎となる下流への変化を予測しているが、特に中流から下流にかけての基礎エネルギーについて知見が乏しい。本研究は愛知県東部を流れる豊川(全長77km)を対象に、上下流14地点において、瀬の付着藻類と底生動物(グレーザー、フィルタラー、プレデター)を季節ごとに採取し、底生動物の食物起源となる有機物を炭素安定同位体比(δ13C)から推定した。各地点と各季節において、δ13Cは高い方から付着藻類、グレーザー、プレデター、フィルタラーの順となる傾向にあった。各季節、付着藻類といずれの底生動物においても、δ13Cは中流の地点で最大となり、上流または下流の地点ほど低い傾向にあった。また、付着藻類と陸生有機物(δ13Cを-28‰と仮定)の2資源モデルから、各地点の底生動物における付着藻類の貢献度を求めたところ、付着藻類の貢献度はグレーザーではどの地点でも高く、上下流の明瞭なパターンは見られなかったが、フィルタラーとプレデターでは、中流の地点で最大となり、上流または下流の地点ほど低くなる傾向にあった。落葉など陸生有機物の供給が卓越する上流から、河川内一次生産が卓越する中流への変化は、既存研究から一般的な傾向である。下流においてフィルタラーとプレデターに対する付着藻類貢献度が低くなる原因としては、支川からの陸生有機物の供給の増加、河川内での有機物堆積環境の増加などいくつか考えられるが、いずれにせよ系全体として一次生産に対し有機物分解プロセスが卓越していることを表しているものと思われる。