ESJ56 一般講演(口頭発表) G1-07
大場真, 村上正吾, 王勤学, 木幡邦男(国立環境研究所)
生態系が人間社会にもたらす財やサービス(生態系サービス)は必要不可欠であるにもかかわらず、当然であるため見落とされ無視されがちであった。人間の社会-経済システムは生態系サービスの価値付けに失敗し自然環境を劣化させ、再び自然の重要さに気づくという繰り返しを歴史に持つ。「自然の恵み」を科学の土台に持ち込むため、これを明確化し定量化する試みが数多く行われている。
日本における森林生態系は国土面積の約7割を占め、物質循環などに関わる生態系サービスは大きいと想定される。森林面積の減少は少ないものの社会経済的な問題から、生態系サービスの低下が懸念されている。しかし、過去からどの程度サービスが劣化し、どのような森林管理によってどの程度生態系サービスを将来維持できるのかという評価が、広域にわたって必要であると考えられる。
本研究は、一級河川が7本流下する伊勢湾流域圏を対象とし、その森林生態系が担う生態系サービスを流域レベルで推定するための森林生態系における物質循環モデルを開発した。この素過程を考慮した新しいモデル(CN-Ise)は、Biome-BGCの処理スキームをベースに、日本国内の森林に適用できるようにプロセスとパラメーターを改良・追加した。また、間伐や伐採などの森林管理による影響も評価が可能である。
モデルは日単位の気象データを元に、水循環を日単位で、炭素(C)と窒素(N)循環を年単位で計算する。生態系サービスの評価のための出力は、炭素吸収量、流出量、水質(TN)、生産木材(バイオマス)量である。モデルは、国内数点の大気交換フラックス観測サイトの水蒸気・二酸化炭素フラックス量、および流域内ダム流入量との比較を行って検証をした。
また、CN-Iseに流域圏内の森林環境を入力するため、森林行政機関から森林簿を収集しGISデータベースを構築した。