ESJ56 一般講演(口頭発表) G1-11
*廿楽法, 金子信博 (横浜国大院・環境情報), 日浦勉 (北大・苫小牧研究林), 村上正志 (千葉大・理), 豊田鮎 (自然研)
土壌生物は土壌構造に影響を与える。その中で、落葉と土壌を摂食するミミズは大型土壌動物であり、有機物分解の促進による物質循環の改善、根や菌根菌への影響、土壌物理性の改変などの効果がある生態系改変者に分類される。土壌の物理性を改変するメカニズムとしては坑道や糞が挙げられる。特に、ミミズの糞は大型の団粒を形成し、その団粒は耐水性団粒であり、ミミズの死後も安定である。この様な糞を始めとする大型の団粒の存在は、土壌中に孔隙を形成し、トビムシやダニなどのミミズと比較するとサイズが小さく、自ら穴を掘れない小型節足動物にハビタットを提供し、物質循環においても重要な役割を果たしている可能性がある。
そこで、団粒の役割を検証するために、北海道大学附属苫小牧研究林内において、2004年に風倒後、皆伐した森林の土壌を填圧機で踏み固めて、土壌団粒を潰した填圧区と、下刈りのみをした保全区で、2007年と2008年にトビムシ目、ササラダニ亜目、トゲダニ亜目、ケダニ亜目の個体数を測定し、また、2008年に窒素無機化速度と土壌呼吸量を測定した。
窒素無機化速度及び、土壌呼吸量は保全区で高い傾向が得られ、含水率や全炭素、全窒素濃度、節足動物の総個体数は有意に高い値が得られた。また、2007年に比べ、2008年で総個体数が多く、撹乱から個体数が回復する傾向が認められ、さらに、填圧区では回復が遅い傾向が認められた。
よって、土壌を踏み固めることによる団粒の破壊は生物多様性や物質循環においてマイナスに作用することが示された。